BiSH・アイナ・ジ・エンド、ジャニス・ジョプリンに 日本初上陸ブロードウェイミュージカルで主演
◆アイナ・ジ・エンド インタビュー
ー⻲⽥さん推薦の元、ミュージカル初主演。お気持ちお聞かせください。
⻲⽥さんが選んでくださったっていうのは、⾔葉にするのが難しいくらいうれしいですね。私、中学1年⽣から2年⽣くらいまで、ミュージカルスクールに⾏っていて、中学⽣の時の夢はミュージカルスターだったんですよ。ミュージカル「アニー」のオーディションとかも受けたくてオーディション紙書いたりしたんですけど、⽗に“お前は顔で落ちるからやめとけ”って⾔われて、オーディションを受けなかった過去があったり。宝塚歌劇団もその理由で受けなかったりしていて。だけどなんか⼩さい時から“⾃分は歌って踊る、それをステージでやりたいと思っていたので。もちろんいまBiSHとしてライブで⾃分を表現できているのはすごく幸せですけど、ミュージカルっていうのは⼩さい時の夢なので、うれしい、やってみたいって思いました。それこそ紅⽩歌合戦とか、すごい緊張感のあるステージの裏とか、どっかのライブの番組の裏とか。⻲⽥さんとお会いするたびに、決まって話題に上がるのがジャニスで。“これ送っとくよ”とか。“こんな資料送っとく”とか。本当にちゃんと送ってくださるんですよ。だからもう、“これいただいたから勉強しよう”って。そんなやりとりをここ半年くらいやらせていただいてます。⻲⽥さんは、ものすごく真⼼があるっていうか、なんかこう、温かいし、全部を包み込んでくれるような、柔らかさがあるのに、すっごい鋭いんですよね。⻲⽥さんはすごく覇気があるんですよ。⻲⽥さんの⽬を⾒てお話していると、私は脇汗が⽌まらなくなる時があって… あの強い覇気ってのは愛のパワーなのか、それとも⾳楽への熱⼼なパワーなのか、私はわからないんですけど、とにかく覇気がすごい。だから、それに影響されて、“⻲⽥さん、⻲⽥さん”って近づきたくなる⼈がいっぱいいるのもめちゃくちゃわかるし、私もそのうちの1⼈ですね。
ーベースを⻲⽥さんご⾃⾝で演奏しますし、その他豪華バンドメンバーとの共演。お気持ちは?
リアルに戦国時代を⽣き抜いた武将たちの集まりだと思うんですけど、あの⽅々は。⾃分なんかが⼀緒にステージに上がるなんてと思うほどの⽅々なので、ちょっと構えてしまいそうですけども、そこを突き破っていきたいですし、そうさせてくれるのがいつも⻲⽥さんなので。穏やかな愛で⾒つめてくれるので。私は精⼀杯やるしかないです。
ージャニス・ジョブリンのイメージは如何でしょう?
27歳で亡くなったという割に名⾔がすごく多くて、⾃分もはっとするような⾔葉が多いです。⽣き⽅がかっこいいなーみたいなのを、めちゃくちゃ思います。「あなたはあなたの妥協したものになる」って、よくわからないけどいろんな意味に捉えられるじゃないですか。“⾃分を安売りするな”っていう意味にも聞こえるし、“あなたはあなたがしたことがすべてだから、すべてをあなたの思うようにしなさい”みたいな意味にも聞こえる。だから、まだジャニスの⾔葉の本⼼はわかってないんですけど、私は“⾃分を安売りするな”って受け取っています。
ージャニスとの共通点はありますか?
知れば知るほどあるんですが、さみしがりやだったのかなって思っています。ドキュメンタリーとか、友達と電⾞で移動してツアー回っている映画を⾒たりすると、すごく楽しそうですけど、どっか空っぽな⽬をしていて…。その時間があるからこそ、歌で発散する、だからあのソウルフルな歌が歌えているのかなって思ったりして。そこはちょっと似ているのかなって。⼈に⾔葉で伝えるのでなく、そのエネルギーを歌に持っていくみたいなところはちょっと共通点なのかなって思ったりしていますね。⽣きがいが歌、みたいな。
ーレスリ・キーさんとのビジュアル撮影は如何でしたか?
集中⼒が途切れたら終わりっていう緊張感のある撮影で、とても楽しかったです。あのテンポ感で、⾵がいっぱい当たる撮影とかも初めてで。緊張してないけど、緊張感があるみたいな。なんかこう⾃然体でいるんだけど集中⼒は必要、みたいな。初めての経験でした。波⻑が、おこがましいかもしれないですけど、合った気がします。レスリーさんが、私がなにげない仕草をしたときに、“そのままいこう”と⾔ってくださったおかげで、“あ、私このままでいいんだ”と思えたので…。さらけだしていけばいくほど、それを受け⽌めてくれたし、それに味付けをしてくれたんですよ。“もっとカメラのほう向いて”とか、“あっち向いて”と。その化学反応みたいなところがすごく楽しくて、“波⻑が合っている、今”って思ったりしました。
ー今回のビジュアル撮影を経てジャニスに近づいている実感はありますか?
おうちでジャニスのことを考えていたら、なんか辿り着く答えが全部悲しくなっちゃうんですよ、今はまだ。それがたぶんポジティブになる⽇が、いつかくると思って、家で向き合っています。今回の撮影で、メイクさんにメイクしてもらったり、⽻つけてもらったり、⾐装着せていただいたり、ライティングでかっこいい「J」っていう光を当ててもらったり。ジャニス・ジョップリンというのになったときに、あ、もしかしたらジャニスって、こんなに考えて考えて考え抜いてないのかもと。だからこそ、あんなソウルが歌えるのかも、と思ったり。
― アイナさんご本⼈について少しお聞かせください。
ダンスを4歳からやっていて、それこそ、私はダンサーとして⽣きていくんだと本当に思っていました。学校も⾏けない時期があったけど、ダンスだけは休まず通っていました。⾼校3年⽣の時、親友とカラオケに⾏った時に…、もうその⼦とは⻑い付き合いなのですが、ダンスもずっと⼀緒にやっていて、カラオケで私が歌ったら泣いてしまって、初めて“尊敬したわ”って⾔われて、“アイナは歌のほうがいいよ”って⾔われたんですよ。
でも思い返してみたら、いつも友達たちとバックダンサー・オーディション受けても、私だけ落ちるとか、⽴ち位置も思い返せばいつも⼀番端っこだったなとか。なんか同い年の⼦とかにも、“アメンボみたいな踊り⽅している”とか、ちょっとばかにされているところがあったなって。でもダンス⼤好きだしな、と悩んでいた時でした。
その親友の⾔葉があったので、歌やってみようかなと思いまして、歌のオーディション受けて、⾼校3年⽣の時に歌の舞台に⽴ったんですが、その時にステージで歌った時に、いままで“アメンボみたい”とか⾔ってた⼥の⼦たちが、終演後⾛って寄ってきてくれて、”めっちゃいいやん!みたいな。なんか私びっくりして。今までダンスで⼀⽣懸命頑張っても、誰も何も⾔ってくれなかったのに、歌を歌うだけでこんなに⼈が寄ってきてくれるんだって。そこで初めて、歌っていうのはもしかしたら⾃分にとって何かこれからの武器になるのかもしれないなって、⾼校3年⽣の時に思いました。そのときはまだ⽣きがいとかじゃないけど、⾃分の居場所がもしかしたら歌かもって思うようになりました。学校にちゃんと⾏けてなかったので。ダンスをやるしか⽣きていく⽅法がなくて。ダンスより歌が楽しいってなったら歌しかなくて。歌やるなら東京でやろうってなって。浅はかな考えだったんですけど。⼀応⼤学とかも決まってたんですけど、⺟を説得して。なんか、東京に⾏かせたくなかったみたいで、すでに⼊学⾦とかも払ってくれていて。でも、どうしても⾏きたいって。そうしたら⽗が“⾏かせたり”って⾔ってくれて。私もジャニスを調べていくなかで、これも1つの共通点だなって。⾒切り発⾞で動いてしまうところとか、結構似ているのかなと思ったりしました。ジャニスはすごくエネルギーがあって、ハスキーでパワフルってイメージがあるかもしれないけど、実はちょっと繊細でさみしがりやな⼥の⼦だったと思います。もちろん⼀⼈で夜を越えるのができなかった時もあったと思うし、うまく眠れない夜も絶対あった⼥の⼦だと思う。それは時代を超えて今もそういう⼈がたくさんいると思うし、私もそうだし。だから、時代関係なく、年齢関係なく、今⽣きている⼈たち皆が、どこか⼼にひっかかるものがあると思うので、⾒にきてほしいなって思います。
ー影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか?
初めてCDを買ったのがYUIさんとかBUMP OF CHICKENとか。もうそれこそギター弾いて歌うみたいなバンドが好きだったり。でも4歳からダンスをやっていたので、だれがアーティストかわからないけど英語の歌で踊るっていう習慣がずっとついていて。⼤⼈になってからビョークが好きだったり、なんか、いっぱいいて…。だからその時々違うんですよね。難しいですね。
最近は、レコードが好きで、本当にお導き系かなって思うくらい、ジャニスをやるってなってから、60年代の、それこそジム・モリソンとか…。なんか知る機会が多くて、60年代の⾳楽を。本当に運命なのかなって思っちゃうくらい多くて。もちろんジャニスと同じ時期に⽣きていたバンドを聞いてみたり、そのほかにはジャケ買いしてます。だから、ジャニスが決まってから、わりとジャケットで選んでレコードを買ったりしてます。
ほんとに全然わかんないジャズのサックスの⼈とか買っちゃいます。
サム・クックとかチャック・ベリーがジョン・レノンを好きだったのかな。
60年代の⼈たちが好きだった、憧れていた⾳楽を最近はレコードで集めたいなと思って、ずっと探してます。
ー今回の共演者とパフォーマンスする意気込みは?※アレサ・フランクリン役:UA、ニーナ・シモン役:浦嶋りんこ、オデッタ&ベッシー・スミス役:藤原さくら、エタ・ジェイムス:⻑屋晴⼦(緑⻩⾊社会)
⾃分⼀⼈で夜にジャニスのことを考えていると、ぼんやりしてきちゃうんですよね。ぼんやりして体だけが熱くなっていっちゃって。不思議な感覚になっちゃうんですよね、今。たぶんそれって、⾃分で気づいていないだけで、もしかしたら、これをプレッシャーっていうのかなとか、思ったりしてて。でもその時にぱっと思いつくのがそのキャストの⽅々で。“⼤丈夫だ、UAさんがいる”とか。“⼤丈夫だ、晴ちゃんがいる”とか。なんかこう⾃分1⼈で踏ん張らなくても、すばらしいキャストの⽅々がいるから、気負わずみなさんで作り上げていこうって⾃分に⾔い聞かせてて。きっとジャニスってそんなに気負った性格してなさそうな気もするんで。楽しみにしておこうと思っています。
ジャニスに“あなたのやることがあなたのすべて” みたいに⾔われてる気がするので、精⼀杯やりきりたいと思います。