母は、変わり果てた息子の姿を世界に知らしめる決意をする― 映画『ティル』本予告映像
ウーピー・ゴールドバーグらが製作した、「エメット・ティル殺害事件」に基づく映画『ティル』(12月15日公開)より、本予告映像が解禁された。
【動画】「エメット・ティル殺害事件」を映画化 『ティル』本予告
世界的な人気を誇る黒人俳優ウーピー・ゴールドバーグ、『007』シリーズのスタッフらが製作した本作は、1955年8月28日にミシシッピ州マネーで起きた「エメット・ティル殺害事件」を映画化。息子を愛する1人の母親の愛と正義の物語であり、自由と人権を求めて世界を変えた1人の人間の実話である。
本作は公開されるやいなや、各国の映画祭で賞賛の嵐を巻き起こし、主要60映画祭で21部門受賞&86部門にノミネートされた。なかでも主人公メイミー・ティルを演じたダニエル・デッドワイラーは、ゴッサム・インディペンデント映画賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、サテライト賞など数々の映画賞で女優賞を総なめにした。
1955年、イリノイ州シカゴ。夫が戦死して以来、空軍で唯一の黒人女性職員として働くメイミー・ティル(デッドワイラー)は、一人息子で14歳のエメット・愛称ボボ(ジェイリン・ホール)と平穏な日々を送っていた。
しかし、エメットが初めて生まれ故郷を離れ、ミシシッピ州マネーの親戚宅を訪れた際に悲劇は起こる。エメットが飲食雑貨店で白人女性キャロリン(ヘイリー・ベネット)に向けて「口笛を吹いた」ことが白人の怒りを買い、1955年8月28日、彼は白人集団にさらわれ、壮絶なリンチを受けた末に殺されて川に投げ捨てられた。
我が息子の変わり果てた姿と対面したメイミーは、この陰惨な事件を世に知らしめるため、常識では考えられないある大胆な行動を起こす。そんな彼女の姿は多くの黒人たちに勇気を与え、一大センセーションとなって社会を動かす原動力となっていく──。
本予告は、親戚の家で楽しい夏の休暇を過ごしていたメイミーの息子エメットが⼀転、白人との間に起こった些細なトラブルに巻き込まれた末に壮絶なリンチを受け、遺体で発見されるところから始まる。突然の悲劇に泣き崩れるエイミー。そして彼女は、悲惨な姿で息絶えた息子のありのままの姿を世界に発信し、その存在と悲劇を世に問う決心をする。
「あの子に黒のスーツを着せてあげて」「息子に何があったのか、皆に見てもらうわ」ときっぱり語るエイミー。そんな彼女にかけられる、「あなたの行動が世界を変えます」という力強い言葉。最後はエイミーが「息子の死で学びました。どこかで起きている悲劇は全員の問題なのです」と演説し拍手を浴びる姿と、息子をハグする姿で終了。絶望を希望に変えるほどの母親の愛と強さが、観る者の感情を揺さぶる映像となっている。
本作でプロデューサーを務めた俳優のウーピー・ゴールドバーグは、2022年の全米公開当時「エメット・ティル殺害事件のことは、同じ黒人なら聞いたことがあるはずです。それは、1つの会話から始まり、2つ、3つの会話へと発展していく。そのようにこの物語が多くの人に広がっていくこと、それがこの映画を作った全員の目標であり、より良い未来をつくるために過去から学び、今行動を起こすことの重要さを伝えたいのです」と語っている。
■解説:「エメット・ティル殺害事件」が現代社会へ及ぼした影響
本作の題材となった「エメット・ティル殺害事件」は、アフリカ系アメリカ人による公民権運動(1950~1960年代に活発となったアメリカの黒人の基本的人権を要求する運動)を大きく前進させるきっかけとなった。
そして21世紀に入り、2020年の「ジョージ・フロイド殺害事件」(ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が、路上で黒人男性フロイドさんの首を9分29秒間、膝で押さえつけ死亡させた事件)を契機に、BLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動(2013年にアフリカ系アメリカ人コミュニティから始まった、構造的な人種差別や黒人への暴力、特に警察による黒人への暴力と戦う国際的な社会運動)がアメリカ国内のみならず、SNSを通じて日本を含む全世界に拡大。
黒人をはじめ著名人、セレブ、Z世代にいたるまで多くの人々が声を上げたこの大規模な抗議運動のうねりは、2022年3月、人種差別に基づくリンチを連邦法の憎悪犯罪(ヘイトクライム)とする「エメット・ティル反リンチ法」成立へと繋がっていくことになった。
映画『ティル』は、12月15日より全国公開。