阿部寛主演『キャンドルスティック』ジャパンプレミア開催決定 “ろくでなし”たちの第2弾場面写真も解禁
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■米倉強太監督が語る阿部寛&菜々緒のキャラクターと撮影エピソード
――野原(阿部寛)について。
本当に、これだけの役者陣をまとめ上げられたのは、阿部さんがいたからこそだと思います。僕自身も含めて、阿部さんが導いてくれた、そんな現場でした。
現場では、阿部さんとたくさん会話しました。僕から質問することもあれば、阿部さんの方から「どうしたい?」と問いかけてくれることもあって。「こうした方がいいんじゃない?」みたいに決めつけるのではなく、あくまで僕自身の意志を引き出すようなスタンスでいてくれました。それがすごく話しやすかったし、自分の意見も言いやすかったですね。そういう意味でも、阿部さんは僕を“監督になっていく”というプロセスへと導いてくれた人です。現場中、ずっと階段を一段一段上らせてくれているような感覚がありました。
また、野原というキャラクターを描くにあたって、最初に悩んだのが「彼を感情豊かな人間にするか、それともAIのような無機質な存在として描くか」という点でした。もし彼を感情の起伏が激しい人物にしてしまうと、物語全体のバランスが崩れてしまう気がしたんです。
結果的には、野原を「まるでコンピューターのような男」として描くことにしました。彼はハッカーやポーカープレーヤーに共通するただ無感情ではなく内面に感情を持ちながらも、それを外には出さずに処理できる才能を持つ人間像として表現しました。
――杏子(菜々緒)について。
菜々緒さんは、現場では本当に周囲のスタッフと気さくにコミュニケーションを取っていて、すごく朗らかな雰囲気を作ってくれました。一方で、僕自身は現場であまり雑談をしないタイプなので、菜々緒さんとは必要なことをじっくり言葉を交わす、という距離感でした。
でも、杏子というキャラクターについては、菜々緒さんからさまざまな意見や提案をいただきました。「このセリフ、杏子なら言わないんじゃないですか?」「ここはちょっと杏子っぽくないかもしれない」といった具合に、細かいニュアンスまで丁寧に向き合ってくださって。野原との関係性についても、同様に深く掘り下げて考えてくれていました。
今回の杏子という役柄は、菜々緒さんにとってもこれまでにない新しい挑戦だったと思います。これまでは、華やかで強く輝く女性の役が多かった印象がありますが、今回はそれとはまったく違う、静かで内面に力を秘めたキャラクター。だからこそ、ご本人も楽しみながら演じていたように見えました。「いかに“自分”に見せないか」という意識で、メイクも含めてかなり繊細に作り込まれていて、白髪もあえてそのままにしていたほど。むしろ、その静けさが杏子という人物の品格として映っていました。