『バレリーナ:The World of John Wick』60歳で急逝したランス・レディックさん、唯一のインタビュー映像公開

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映画『ジョン・ウィック』シリーズ最新作『バレリーナ:The World of John Wick』より、2023年3月に亡くなった俳優ランス・レディックさんのインタビュー映像が公開された。ランスさんにとって、JWシリーズ最初で最後のオフィシャルインタビューとなる。
【動画】最後のシリーズ出演になったランス・レディックさん、インタビュー映像
シリーズ第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)とクロスオーバーした時系列で描かれる本作。広がり続けるジョン・ウィックワールドに新たな血を注ぐ“復讐(ふくしゅう)の女神”誕生の物語が描かれる。
ニューヨーク・コンチネンタルホテルの忠実なコンシェルジュ・シャロンは、JWシリーズ屈指の人気キャラクター。『ジョン・ウィック』から『コンセクエンス』まで、すべてのJW映画に登場し、その紳士的で時に頼りがいのあるキャラクターは、多くのJWファンに愛されてきたが、彼の姿はシリーズ最新作で見納めとなる。
悲しいことに、そんなシャロンを演じてきたアメリカ人俳優ランス・レディックさんが、2023年3月に60歳の若さで亡くなった。そのため、JWシリーズとしては、『バレリーナ』が彼の遺作となる。
ランスさんは1962年、メリーランド州生まれ。大学時代はイーストマン大学で音楽を、イェール大学演劇学校で演技を専攻。『LOST』や『FRINGE/フリンジ』などの人気ドラマシリーズに数多く出演し、俳優だけでなくミュージシャンとしても活躍してきた。主な出演作に、『大いなる遺産』『サウンド・オブ・サイレンス』『ザ・ゲスト』『エンド・オブ・ステイツ』『ゴジラvsコング』などがある。
ランスさんが演じてきたシャロンは、JWシリーズの登場人物たちの奥深さや多面性を象徴するかのような存在だ。振り返れば、シャロンは第1作『ジョン・ウィック』において、華麗に仕事をこなす紳士的なコンシェルジュとして初登場。第2作『チャプター2』でジョンの愛犬を仕事外で預かる優しい一面を見せたかと思えば、第3作『パラベラム』ではジョンと一緒に華麗な銃撃戦を披露した。
『バレリーナ』の撮影が行われたのは、シャロンが劇中で死を遂げた第4作『コンセクエンス』の公開前の時期。本作は時系列が『パラベラム』の時点まで戻るため、ランスはシャロンを再演する機会を得ることになった。しかし、残念なことに本作のクランクアップからわずか数週間後にこの世を去った。
ランスさんは本作の脚本を読んで、その新たな世界観に驚いたと同時に、そこにシェイクスピアの影響を感じたという。JWシリーズと『バレリーナ』を比較しながら、ここまで拡大してきたJWワールドについて次のように分析している。「最初の『ジョン・ウィック』は、登場人物たちが、文化的制約の中でそれぞれの個性を主張しようとしていたけれど、この作品はそれを家族のレベルまで広げている。『リア王』や『ハムレット』やギリシャ悲劇を想起したんだ」。その完成度の高さに思わず、レン・ワイズマン監督にシェイクスピアが好きなのか聞いてしまうほど、本作の脚本は彼の知性とマッチしたようだ。
続いて、インタビューはシリーズ初の女性主人公に抜擢されたアナ・デ・アルマスの話題に。ランスさんはアナのアクションを『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で初めて見たというが、この映画のイヴは、それ以上に「タフさが問われる」役であると同時に、「哀愁が感じられる」役でもあると分析。そして、アナはそうした「極めて繊細な演技を見事に演じ分けられる」稀有な俳優だと太鼓判を押した。劇中ではイヴがコンチネンタル・ホテルを訪れ、シャロンと会話するシーンも描かれる。アナとランスの初共演シーンにも注目だ。
ランスの分析眼は作品や主人公ばかりでなく、自身の役シャロンにも向けられる。これまで演じてきた他作品とは「まったく違う役」だと語りつつ、「この役を演じてワクワクしたのは、これまで経験のない役柄だったから」と振り返る。また、その考察はJWシリーズを通じたシャロンの変化にまで及び、「作品を通してシャロンの変化を追ってみると、最初はミステリアスなキャラクターだったが、次第に心を持った存在へと変わる。ジョンが作品の“魂”なら、シャロンは“心”だろう」と、本作のタイトルロールであるジョン・ウィックと双璧をなす重要なキャラクターだと静かに語り、最後のインタビューを締めくくった。
映画『バレリーナ:The World of John Wick』は、8月22日より全国公開。