
小沢栄太郎
小沢栄太郎 出演映画作品
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夜の蝶〈1957年〉
制作年:2000年12月2日(土)公開
川口松太郎の原作を京マチ子と山本富士子という大映二大女優の顔合わせで映画化した風俗映画。東京・銀座の夜の世界を舞台に、二人のバーのマダムが、色と欲のために女の闘いを繰り広げる。吉村公三郎らしいハッタリをきかせた演出が見もの。
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月姫系図
制作年:
武田勝頼の遺宝ををめぐる浪人と旗本娘の活躍を描いた伝奇娯楽アドベンチャー。遺宝の秘密は“風林火山“を象る4枚の枝折に託され旗本娘の雪絵が“風“を浪人の進太郎が“山“を持っていた。だが“林“の枝折を持つ奉行が忍者を使ってすべての枝折を集めようとする。謎は能面をつけた女“月姫“のみが知っているのだが……。
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紫右京之介 逆一文字斬り
制作年:
父・伝右衛門が残した巡察覚え書きが、幕府の権力を一手に握ろうとする大老・酒井の手にあると知った右京之介。彼は酒井邸に忍び込むが、隻腕の侍・剣之助に斬りつけられて危機一髪で脱出することに。幼なじみを酒井の配下に殺され、父の死も酒井に関係することを知った右京之介は単身、酒井に挑んでいく。大川橋蔵が主役になって大活躍する時代劇アクション作。
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なにがなんでも為五郎
制作年:
ハナ肇のヒット曲からヒントを得て、ジェームス三木と野村芳太郎が脚本を担当。ムショ暮らしを務め上げた為五郎は故郷・上州赤城へ帰って来たが、駅前に昔世話になった黒岩一家が総出でお出迎えと思いきや、誰もおらずズッコケる。別荘暮しをしている間にすっかり変わってしまった町のヤクザと、為五郎のスレ違いをユーモラスに描く。
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不沈艦撃沈
制作年:
昭和16年、海軍省から10割の増産を厳命された昭和精器は、粉骨砕身の努力でその要請に応え、やがてその目標を達成させていく……。太平洋戦争の時局悪化も著しい昭和19年に、銃後の士気を高めようとする軍部の意図に応じて、名匠マキノ雅広監督がメガホンを握った戦意昂揚映画。タイトルの勇ましいイメージとは裏腹に、実際は国のためにみな働けといった強要のメッセージが全編を支配している人間ドラマである。
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忍ぶ糸
制作年:
組紐づくりをやりたくて三重県・伊賀の名門、増住家を訪ねた貧しい少女・千賀。最初は相手にされなかったが、家の息子・洋三の口ききで雇ってもらうことに。二人は恋仲になるが、身分が違いすぎると反対されて……という古風な悲恋大メロドラマ。伝統工芸である組紐作りの過程が興味深く描かれている。
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旗本退屈男 謎の七色御殿
制作年:
月照宮に仕える7人の巫女の一人が、何者かに暗殺されるという事件が起こる。これを目撃した娘芸人の千鳥と小百合も危うく殺されそうになるが、退屈男・早乙女主水之介に救われる。共演陣も村田英雄、こまどり姉妹といったにぎやかな顔触れ。
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拳銃横丁
制作年:
港町、横浜。劉一味にことごとく押されぎみの大須賀組は、神戸から、“早射ちマック“の異名をとるガンマンの牧を駆り出す。牧は途中の車内で殺されかけるが、サブという男に助けられる。彼は弟の死の真相を探るため横浜へやって来たという。横浜に到着した牧が大須賀組の用心棒となる一方で、サブは劉一味に用心棒として入り込むが……。意外な展開で驚かせる小粋なサスペンス活劇。
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懐しのブルース
制作年:
“古い日記の頁には、涙のあともそのままに――“主題歌『懐しのブルース』のメロディーに乗って物語は展開する。没落華族の娘が、病気の妹や生活のためにキャバレーの歌手となり、ある男と恋愛、ドライブに食事にと楽しい時を過ごす。しかし彼には療養中の妻がいることが判る。“帰らぬ夢の懐しさ“と思い出を胸に秘め、涙をこらえ歌うのであった。主題歌『懐しのブルース』『燃える瞳』は発売と同時に大ヒット。
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夕月
制作年:
マンションの火事で看護婦の潤子はボクサーの森田に助け出される。心を惹かれ合う二人がふとした誤解からすれ違ってしまう。やがて試合で森田の目が見えなくなってしまった……。オーディションにより選ばれた森田健作が好演したホロ苦い青春映画の佳作。
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忍びの者 続・霧隠才蔵
制作年:
大阪落城後、幸村を助け薩摩の島津家に落ち延びた才蔵は、徳川方の探索を逃がれ種ヶ島に渡るが、服部半蔵らに発見される。幸村は潔く自決し、復讐を誓った才蔵は駿府に潜入する。時代の流れに対してたった一人で戦いを挑む男のむなしさがよく出ている。
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妖僧
制作年:
厳しい山嶽仏教の修業に100人のうちでただ一人耐え抜いた行道は、恐るべき魔力を秘めた法力を獲得した。法力で女帝の病を治し、その信任を厚くした行道は、名を道鏡と改めて宮廷にとどまり、やがて女帝の深い寵愛を受けて法王の位を授けられる……。耽美派で知られる衣笠貞之助監督の異色王朝もの。
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十手舞
制作年:
町奉行の命を受け、悪の巨魁を秘密裏に葬り去る“影十手“となった花嵐のお蝶が、闇の殺し屋に堕とされた自分に気づき、奉行に復讐を挑むまでを描いた時代劇アクション。五社英雄自らの原作の映画化で、新体操のリボンを操った石原真理子の華麗さが見もの。
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新仁義なき戦い・組長最後の日
制作年:
“新 仁義なき戦い“シリーズ第3作で、ストーリーは前作同様、独立したものとなっている。大阪の大暴力団と九州の暴力団の抗争のなかで、組織を外れた男が単独で大暴力団の組長の首を狙う。組織の上層部の駆け引きと、血気にはやり死んでいく若者たちが描かれる。
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酔いどれ波止場
制作年:
脚本・新藤兼人、監督・井上昭のコンビによる“酔いどれ“ものの1編。酔いどれの名医・ギョロ松は、ある港町にふらりとやって来る。ギョロ松は町医者のオイボレ先生のもとで評判の医者となり、二組の暴力団をうまく操って町を一掃する。
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ある大阪の女
制作年:
貧苦の中を、だらしない男どもをダシに身体を張って生きる悪女をじっくり描いた人間ドラマ。アヤコは貧民街育ち。婚約者の進は借金に苦しみ、弟はヤクザで父はヤケ酒をあおっている。彼女は勤務会社の社長から預かったヘソクリを使い込もうとしてバレるが、逆に社長にとり入って彼をだまし、進の借金返済をもくろむ。
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女
制作年:
オール・ロケ、登場人物は男女二人だけという、木下惠介ならではの意欲的な趣向の作品。意志が弱くヤクザな仕事しかできない一人の男と、彼にふがいなさを感じながらもついていく一人の女の道行きを追っていく。木下組カメラマンとして知られる楠田浩之は、木下惠介の妹で脚本家でもある楠田芳子の夫。外景を生かした撮影が優れている。
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錆びた鎖
制作年:
“渡り鳥“シリーズで小林旭を売り出した斎藤武市監督と、赤木圭一郎の初顔合わせによるアクション映画。横浜港の荷役作業を扱う会社を乗っ取ろうとするヤクザの策謀を、殺された社長の息子兄弟が協力して粉砕する。小高雄二の好演が光る。
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勲章
制作年:
元陸軍中将・岡部は再軍備促進団体“あけぼの会“の会長にされるが、やがて彼は昔の暴君ぶりを発揮し始める。岡部の息子は父の勲章を愛人に与え、愛人はその勲章を犬にぶら下げた。岡部の家庭は崩壊し、“あけぼの会“の運動も失敗する。岡部は勲章を嘲ける息子を殺し、自らも死地を求め歩き出す。渋谷実の問題作。
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病院坂の首縊りの家
制作年:
横溝正史原作、市川崑監督による1970年代“名探偵・金田一耕助“ものの最後の作品。原作においても、金田一耕助はこの事件の解決を最後に行方不明になる。パスポートの写真を撮るために本条という古くからの写真館を訪ねた金田一耕助は、偶然結婚記念日の写真撮影を依頼しに来た娘と出会い、死人のような面影に不審を抱く。彼女の指定した“病院坂の首縊りの家“と呼ばれる古い邸に写真館の店主とともに様子を見に行くが、そこでは惨劇が繰り広げられていた……。シャンデリアの鎖に風鈴のようにぶら下がった生首、そして首の顎ヒゲには血まみれの短冊。ショッキングなシーンの連続。
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さくら隊散る
制作年:
「原爆の子」「第5福竜丸」と、原爆問題と取り組んできた新藤兼人監督の原爆ものの1本。第二次大戦下、丸山定夫・園井恵子・高山象三、などの新劇人を中心とした移動演劇隊の一つ・櫻隊が広島で巡演中に原爆の洗礼を受け、9人が非業の死を遂げるまでを忠実に再現した。
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植村直己物語
制作年:
モンブラン、エベレスト、北極圏など、冒険家・植村直己の足跡を忠実に追ってロケを敢行。エベレスト登頂から北極点到達まで、自分との戦いとして冒険に懸けた彼の半生を劇的に再現したヒューマン・ドキュメンタリー・タッチのドラマ。西田敏行の執念ともいえる演技が光る。
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悪党〈1965年〉
制作年:
谷崎潤一郎の戯曲『顔世』を新藤兼人が脚色し、監督した戦乱の世の物語。14世紀、南北朝の動乱の時代、田舎武士の妻で絶世の美女顔世に恋こがれる足利将軍の執事・高師直の愛と苦悩の日々をエネルギッシュに描く。京都市郊外の亀岡に寝殿造りのセットを組み、その近くにプレハブ住宅を建てて、スタッフ一同合宿して撮影に臨んだ。
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日本の首領〈ドン〉 野望篇
制作年:
三船敏郎が暴力団会長に扮して登場する。昭和46年、勢力を回復した中島組は、関東進出の第一歩として桜商事を作る。東京の暴力団松風会の会長・大石は右翼の大物・大山を顧問に迎えて、暴力団連合“関東同盟“を結成し、これに対抗する。
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大曽根家の朝
制作年:
木下惠介監督の戦後第1作で、戦前プロレタリア演劇運動の中心的作家であった久坂栄二郎が、脚本を担当した反戦映画の力作。大曽根家は戦争によって息子たちが次々に出征し、軍人の叔父がわが者顔で家を占拠するが、終戦になり息子たちを失った母は、毅然として叔父の卑劣な態度をなじり、立ち退きを要求し……。戦後、占領軍指令部によって軍国主義の批判と民主主義の啓蒙というテーマが日本映画に課せられた。この作品は、そうした軍国主義批判の最初の力作として記憶に残る作品となった。木下惠介はこの作品の後、セキを切ったように傑作、話題作を次々に発表し、黒澤明と並ぶ戦後日本映画の巨匠となった。DVDは「木下惠介 DVD-BOX 第1集」に収録。
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「女の小箱」より 夫が見た
制作年:
会社の株式課長の重責を担う川代。彼は今、会社の株が何者かによって買い占められようとしていることに頭を悩ませていた。そんな彼の妻・那美子は、家庭をほったらかされた腹いせに、バー“2・3“へ遊びにいく。そのバーの経営者・石塚こそが、川代の会社乗っ取りをたくらむ張本人で……。川代と妻・那美子、そして石塚とその秘書、バーのマダム。彼らが繰り広げる、陰謀と愛欲が入りまじった心理戦を、増村保造が持ち前のカット構成の技法を駆使して描く。増村=若尾コンビの代表作。
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危険な女たち
制作年:
A・クリスティの『ホロー荘の殺人』を野村芳太郎が翻訳して映画化。とある別荘に集まった人々の、複雑に絡んだ人間関係が殺人を呼ぶという内容。この作品以前に金田一耕助を演じた石坂浩二がここでも探偵まがいの小説家を演じている。室内劇スタイルで贈る極上の犯人当てミステリー。
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妻は告白する
制作年:
日本的束縛の世界に生きる女性が、恋愛を契機になりふり構わず一直線に情念に走る姿を描き続けてきた、増村保造=若尾文子コンビの最高作。登山パーティーの一人が転落死する。メンバーは、大学の助教授とその妻、助教授の教え子で妻の愛人である男の3人。死んだのは助教授で、ザイルを切った妻は、その行為が事故を最低限度にするための緊急避難であったか、それとも殺意によるものだったのか裁判にかけられる。ラスト近く、雨でびしょ濡れになった和服姿で、男の会社を訪れる若尾の姿は、増村の演出と若尾の熱演により、恋に狂う幽鬼のような、すさまじい迫力を出している。
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眠狂四郎 女地獄
制作年:
佐伯藩14万石をめぐる二人の家老の権力争い。その渦中で密書を手に入れた狂四郎は、それがきっかけで角兵衛獅子の姉弟を死なせてしまう。二人の死を胸に狂四郎は佐伯藩に乗り込むが……。伊藤雄之助、田村高廣など仇役の男優陣が充実している。
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霧の夜の男
制作年:
「激流に生きる男」(1962)からアクション俳優に転じた、高橋英樹の初期の主演作。家業であるヤクザを嫌って船員になった青江舜次は、父が殺人罪の汚名を着せられていると知り、調査に乗り出す。殺人を裏で操っていたのが、悪徳ボス、伍堂と知った舜次は……。ヤクザの家業を捨ててカタギの生活を送る青年という設定は、のちの高橋英樹のヒット・シリーズ“男の勲章”を思わせる。
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脱走遊戯
制作年:
囚人を刑務所から脱走させる“脱走仕掛人”の活躍を描くアクション映画。多額の報酬で脱獄の手助けをする神木隆は、ある脱獄グループの一員として働くことになった。しかし彼の本当の目的は、グループのボス・田所が狙う30億円のダイヤを横取りすることだったのだ。キレのいいアクションで魅せる千葉の悪党ぶりが見もの。
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俺の血が騒ぐ
制作年:
石原裕次郎主演の「鷲と鷹」にも通じる、船を舞台にした海洋ミステリーの佳作。船長をしていた父が、何者かに殺されたことを知った笠原邦夫は、父の仇の手掛かりを求めて、玄海丸に乗り込む。船員は皆ひとクセある連中ばかり。なかでも、邦夫の元婚約者で、今は弟・明の恋人、節子の父親である船医が怪しいと邦夫はにらむ。
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告訴せず
制作年:
衆院選に立候補した木谷は、派閥を裏切り、反対派のボスから3千万円を調達する。ところが金の運搬役が、その金を横領して姿をくらましてしまう。告訴したくても告訴できない、社会の仕組みを鋭く突いたブラック・コメディ。主役の金に操られていく男を青島幸男がコミカルに演じている。
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現代っ子
制作年:
倉本聰と引田功治が脚本を担当した連続TVドラマの映画化作品で、監督には中平康があたっている。父の突然の死によって別々に生活しなければならなくなった長男、次男、長女のそれぞれ3人の異なった生き方を描くシリアスな青春ドラマ。
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悪魔が来りて笛を吹く〈1979年〉
制作年:
不気味なフルートの音とともに起きる殺人事件を、西田敏行扮する名探偵・金田一耕助が鮮やかに解決する。監督は『太陽にほえろ!』『俺たちの旅』などTVシリーズで傑作を撮っている斎藤光正。光と影をうまく対比させた映像作りが面白い。
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ゴジラ〈1984年〉
制作年:
ゴジラ生誕30周年を記念して「メカゴジラの逆襲」以来実に9年ぶりに製作された。怪獣トーナメントを繰り返し、すっかり子供のアイドルと化したゴジラのキャラクター。生誕30周年を機に、第1作で凶暴な怪獣として、初登場したゴジラのキャラクターが今回再び採用された。しかし、ドラマ部分のテーマに核戦争の恐怖を設定したのはいいが、橋本幸治の演出は陳腐な人間ドラマの域を出ていない。また、肝心の中野昭慶の特撮はあまりにメカニックに頼りすぎて、ゴジラ本来の原始的な凶暴さが全く生かされなかった。
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悲しみは女だけに
制作年:
尾道で飲食店を開いている政夫のもとに、姉の秀代がアメリカから帰ってきた。実は彼女は30年前に結納金目当てで、とある家に身売りをされていた。やがて、秀代の財産を狙った一族のいさかいが始まり……。劇団民芸が上演した新藤兼人の戯曲『女の声』を、新藤自身が舞台的手法も取り入れて脚色・監督している。
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第五福竜丸
制作年:
1954年3月1日午前3時42分、第五福竜丸の乗組員たちは暗闇の中で火柱が天空に立ち昇るのを目撃。数分後大爆音が響き渡り、やがて雪のような死の灰が降り注ぐ。アメリカのビキニ環礁での水爆実験時に立入禁止区域外にいて何も知らされず被爆した人々の逸話。そのパニックへ向かう運命を描いた社会派の人間ドラマ。
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肖像
制作年:
ともに戦中から注目された新人監督だった黒澤が、木下のためにオリジナル脚本を書き下ろしたのが本作品である。借家人の老画家一家を追い出すために父娘を装って不動産屋と妾が入居するが、老画家一家の温かい人情に触れ自分の過ちに気づき、妾は旦那と別れて自立の道を歩む。可憐な桂木洋子のデビュー作でもある。
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黒薔薇の館
制作年:
「黒蜥蜴」に続く女装の麗人・丸山明宏主演の異色作。黒薔薇の館に君臨する謎の美女と、組織を裏切って人を殺し、組織と警察の両方から追われる青年との死をも恐れぬ絶対の愛を描く。前作は三島由紀夫の舞台劇の映画化だったが、今回は映画用のオリジナル・ストーリー。
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女優須磨子の恋
制作年:
夫と離婚して新劇運動に飛び込んだ須磨子は、自由恋愛を説く学者・島村抱月と出会う。新劇界の大スターとなっていく須磨子と新劇運動のリーダーとして活躍する抱月との恋は、やがて悲しい結末を迎えることになるのだった……。溝口=田中の名コンビで描く女性の自立をテーマとした一編。
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くたばれ愚連隊
制作年:
鈴木清順初のカラー作品であり、ダイヤモンド・ラインの和田浩治と初めてコンビを組んだ記念すべき作品。二人のコンビは7作続いた。淡路島の旧家の当主が死に、妾腹の定夫が跡取りとして島に呼ばれる。そこへ用地買収を進める悪徳業者と定夫の実の母が現れ……。痛快青春アクション。
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儀式
制作年:
少年のとき満州で敗戦を迎えた主人公が内務官僚だった祖父の支配する桜田家に帰り、自殺した父の異母兄弟やその子供らと戦後を生きていく。桜田家は家長の祖父が手あたり次第に手をつけた女たちの子や孫により複雑な血縁関係をつくっていて、この奇怪な男根支配の中に左翼や右翼といった個人個人の立場は飲みこまれてしまっていた……。敗戦によっても揺らぐことのなかった家父長制度の中で生きていくことを強いられた戦後世代の若者たちの悲劇を、大島監督が自らの青春をも投影して作り上げた傑作。個人が家に組み込まれ支配されるさまを、冠婚葬祭の儀式によって描いた点にこの映画のオリジナリティーがある。また主人公が幼くして死んだ弟の存在を大地から聞きとるシーンや、戦後の自由を精いっぱい謳歌するかのように野原で繰り広げられる三角ベースといった、可憐なポエジーに裏打ちされた戦後の青春への鎮魂歌でもあるのだ。不気味な日本の家制度をそのまま日本家屋に造形しえた美術も、絶賛に値しよう。
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荷車の歌
制作年:
全国に広がる農業共同組合の婦人部が手をつなぎ、一人10円のカンパで3200万円を集め製作された山本薩夫監督の力作。広島県の山村の貧農の娘として生まれた主人公が結婚し姑にいじめられ、夫に裏切られながらも苦労に耐えて生き抜いていく姿を描く。こういう役をやらせたら他の追随を許さない望月優子の力演が印象に残る。
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十八歳、海へ
制作年:
中上健次の短編小説集『十八歳、海へ』に収録された“隆男と美津子”を、大島渚監督作品や「青春の殺人者」の鬼才ライター・田村孟と新人・渡辺千明の共作で脚色。「八月の濡れた砂」で始まった1970年代型青春の苛立ちと倦怠を、藤田監督が自ら締めくくる。海での“死にっこゲーム”に取りつかれた予備校生男女の末路を鮮烈に描いた佳品。
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誇り高き挑戦
制作年:
鉄鋼業界紙の記者・黒木は、ある大企業が東南アジア某国の反動政府に武器輸出を行っていることを嗅ぎつける。さらに戦後GHQの諜報部員として黒木にリンチを加えた男・高山が大きく関与していることも知る。大新聞も警視庁も沈黙を守るなか、高山を追い詰めることに成功する黒木だが、高山は危険を感じた背後の組織に消されてしまう……。テンポの良いサスペンス・ドラマに兵器産業の復活やCIAの暗躍などの社会問題を折り込んだ、深作監督の出世作。戦後民主主義への幻想と失望が色濃く出ていて、鶴田浩二が終始サングラスをかけたまま、ニヒルな絶望に沈んでいるのが強い印象を残す。
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花咲く港
制作年:
南九州のある港町に、昔ある男が漂然とやって来て造船所を造ろうとしたが失敗。しかしその男は豪胆な性格のため、人々から尊敬をもって迎えられる。ある日、男は突然南方へ旅立って行く。それから15年が過ぎ、その男の遺児と名乗る男が港町に出現。それに続いてまた一人、遺児と名乗る男がやって来る。二人の遺児は兄弟だった、と思いきやそれは真赤な嘘。彼らペテン師が純朴な村人たちの中で繰り広げる騒動を描いたユーモラスな作品。木下惠介の第1回監督作である。木下は最初松竹蒲田の現像部に入社、その後撮影部に転じ、入社3年目にして念願の演出部に移った。やがて書き続けた脚本が認められ監督に昇進した。DVDは「木下惠介 DVD-BOX 第1集」に収録。
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激流〈1944年〉
制作年:
五所平之助、渋谷実の助監督を務めていた家城巳代治の監督デビュー作。本作は当初、渋谷監督の手で映画化される予定だったが、彼が応召されたため、家城が代わりに演出を担当した。戦時下、当局から各映画会社に割り当てられた生産増強をテーマとする国策映画の1本で、本作は石炭産業を扱ったもの。鉱山会社の男性社員とその同僚の娘との恋を主調音に、採掘法や事故などの問題を描いていく。
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長屋紳士録
制作年:
太平洋戦争後の映画界では軍部による統制が解かれ、軍政批判の題材を取り上げる映画作家が続出したが、小津はそんな風潮には迎合せず、サイレント期の「出来ごころ」「浮草物語」「東京の宿」などの坂本武を主人公とした“喜八”ものを取り上げた。だがここでは喜八本人はむしろ脇役で、相手役の“かあやん”が主人公となっている。荒廃した焼け野原の東京を舞台に、親にはぐれてしまった子供が長屋に連れて来られる。人々はグチをこぼしながらも次第にその子供と情が通じるようになり、やがてその子は長屋になくてはならない人気者になる。しかしある日子供の父親が姿を現した……。ほのぼのとした人情とユーモアにあふれる作品であり、小津安二郎監督の作品のなかでも、最も温かい感情に満ちた一編と言える。笠智衆ら長屋の連中が酔っぱらって“のぞきからくり”の口上を歌いはじめるシーンのにぎやかな盛り上がりは抱腹絶倒もの。
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我が恋は燃えぬ
制作年:
明治の自由民権運動の女性闘士で、女性解放運動のさきがけともなった影山英子の『妾の半生涯』をもとにして構成されたメロドラマ。岡山の旧家に育った英子は、恋人の自由党員・早瀬を慕って上京するが、早瀬は実は藩閥政府のスパイだった。傷心の英子は弾圧にもくじけずに闘うが……。
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暴力金脈
制作年:
東映実録ヤクザ路線の1本。いつもの暴力団と異なり、今回は総会屋を物語の中心に据えて、暴力と謀略渦巻く人間ドラマを描く。一匹狼の総会屋・中江は暴力団の若衆と手を組み東京へ進出、企業の内部紛争に紛れ込み、大総会屋と対決する。
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近頃なぜかチャールストン
制作年:
次郎は行きずりの少女を公園で追いかけ、婦女暴行未遂でブタ箱入り。彼はそこで非行中高年たちと知り合う。この老人たちは自分たちを独立国“ヤマタイ国”の閣僚と称している。翌日、釈放された次郎は、お手伝いのタミ子とヤマタイ国を探すが、何とそこは蒸発中の次郎の父が、彼らに無償で提供した家だった。かくして老人たちと次郎の奇妙な交流が始まる。戦中派の心情をコミカルに描くことに定評のある岡本喜八の作品。高齢化社会と日本の右傾化を、奇想天外な設定で風刺した。カッティングのセンスが喜八タッチの健在を示した。脚本と主演の利重剛は自主映画出身で、PFF1981入選者である。
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くちづけ〈1957年〉
制作年:
川口松太郎の原作を、イタリア国立映画センターに留学していた増村保造が帰国後に第1回作品として監督した青春映画。欽一と章子は小菅の拘置所の面会室で知り会う。欽一は章子をオートバイに乗せて海岸まで突っ走り、青春を謳歌しようとする。一方、章子は父の保釈金と母の入院費の工面に困り、身体を売ろうとし……。“ボーイ・ミーツ・ガール”の単純なメロドラマ構造に、現代的な青春像をドライかつエネルギッシュにたたき込んだ鮮烈なデビュー作。その甘い感傷を排した、ストレートでみずみずしい行動描写は、やがて台頭する松竹ヌーヴェル・ヴァーグの若手監督たちに大きな影響を与えた。
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サンダカン八番娼館 望郷
制作年:
第4回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した原作を、社会派の熊井啓が映画化した感動作。東南アジアから売春の出稼ぎに来た“ジャパゆきさん”の方が有名だが、その言葉のもととなった“からゆきさん”の悲しく衝撃的な話を力強く描いている。この作品の3年後に他界した大女優・田中絹代の名演は永遠に忘れられることはないだろう。女性史研究家の三谷圭子は、“からゆきさん”と呼ばれる海外売春婦のことを調べているうちに貧しく孤独に暮らす老婆と出会う。圭子は老婆の家で共同生活をしながら、老婆の語る過去を記録していく。カットバックで回想されるそれは、想像もできないほどの重い事実だった。
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太夫さんより 女体は哀しく
制作年:
1955年に劇団新派によって上演され、テアトロン賞を受賞した北条秀司の戯曲『太夫さん』を名匠・稲垣浩が映画化。300年の伝統を誇る京都・島原遊廓の老舗、宝生楼を舞台に女主人とそこで働く遊女たちの生態を描く。太夫・玉袖に扮する乙羽信子が好演、田中絹代、浪花千栄子ら名優が脇を固める。
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ブルークリスマス
制作年:
世界の各地でUFO目撃者が続出、目撃者の血は青色に変わるという噂が飛びはじめる。特殊部隊勤務を任命された国防長参謀本部の沖は、自分の恋人からUFOを見たことを告白され、そして恐るべき展開へ……。倉本聰脚本による日本では珍しいSFロマン。岡本喜八監督のユニークな視点が楽しめる快作にして怪作。
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野狐笛 花吹雪一番纏
制作年:
東千代之介が、出生の謎を持つイキな町火消しを演じた、娯楽時代劇。三次は、野狐の絵をあしらった横笛と一緒に捨てられていたという男。今は、町火消の“に組”の初五郎に引き取られている。彼には、おきぬという幼なじみがいたが、そのおきぬに旗本の尾形玄蕃が目をつけて……。
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疑惑
制作年:
死者に3億円の保険金がかけられていたという実際の事件にヒントを得た、松本清張の同名小説の映画化。野村監督作品の傑作の一つ。清張自身が脚色を施し、容疑者も弁護士も女性に変えて、女同士の感情の葛藤という要素を付加している。桃井かおりと新聞記者役の柄本明が好演。
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切られ与三郎
制作年:
市川雷蔵の与三郎、淡路恵子のお富で『与話情浮名横櫛』を映画化。有名な源氏店のゆすり場はむしろさらりと描かれ、与三郎にひたむきな恋心を寄せる義理の妹との顛末に伊藤大輔らしい哀感が漂う。宮川一夫の撮影も魅力。
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女が階段を上る時
制作年:
菊島隆三のオリジナルの脚本を演出した成瀬巳喜男監督の名作。夫の死後、生活のために高級バーの雇われマダムになった女と、その周囲に生きる人間たちの生態を描く。身体を張ってのし上がっていく同僚たちを尻目に、貧しくとも堅気の生活に戻りたいと願う主人公を高峰秀子が気高く演じた。男たちに思いを踏みにじられても涙を見せない凛とした姿が美しい。仲代達矢扮する若いマネージャーが捧げる真の愛情にゆらめきながらもふと思いとどまる一種の禁欲性に、成瀬メロドラマの真骨頂が見出せる。なお、題名は高峰の勤めるバーがビルの2階にあることに由来する。
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ひき逃げ
制作年:
交通事故で子供を殺された女の復讐劇。主演の高峰秀子の夫である、松山善三のオリジナル脚本を成瀬巳喜男が演出。交通戦争という社会問題を告発した物語展開には、松山の道徳観が色濃く反映している。良心の呵責にさいなまれ自滅する加害者役の司葉子が好演。
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甘い汗
制作年:
水木洋子のオリジナル脚本を豊田四郎が監督した下町の風俗ドラマ。従来の豊田作品には見られない、バイタリティーあふれる現代の女を描き、新境地を開いた。水商売を転々とする中年のヒロインを京マチ子が好演、岡崎宏三のカメラがその存在感を熱っぽく描写。佐田啓二最後の出演作。
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けものみち
制作年:
松本清張の原作を鬼才・須川栄三が映画化。病気の夫を焼き殺し、けものみちに迷いこんだ女・民子が、男たちの道具としてもてあそばれながら情欲の渦に巻き込まれていく様を描く。池内淳子が自分の意志でけものみちに堕ちる宿命の女・民子を熱演している。
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