“戦争”をテーマにしながらもシリアスと笑いの緩急で上質なコメディに/劇団SET『愛と友情の大脱走』稽古場レポート
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ベ平連の新人メンバー・猛(白倉基陽)と智規(長谷川慎也)の成長と友情、彼らを取り巻く人々の物語も見応えがある。 勉強はできないが人懐っこく行動力がある猛と、理想に囚われがちな東大生・智規が価値観の違いでぶつかりながらお互いを理解していく姿は、少年漫画のような王道の熱さがある。
蘭子と一緒にグループ活動をしているさゆり(丸山優子)・桃子(白土直子)の友情、マネージャーとして彼女たちを支える堤(栗原功平)、若者たちを見守る大人の愛情。ベテランキャストは笑いを担っている場面も多いのだが、締めるところをきっちり締め、作品の土台を作っている。人生についてきちんと考えて生きてきた年長者らしい言葉を届けるキャラクターが複数いることで、作品に深みと温かさが生まれていた。
トミーやベ平連を応援していると「敵」のように見える警察や軍も、ユーモラスで憎めない一面を持つキャラクターとして魅力的に描かれている。メインどころからちょっとしたキャラクターまで一人ひとりが愛すべき人間として存在しているため、本番までの稽古を通してさらに磨かれていくのが楽しみだ。
そして、お決まりになっている三宅と小倉のシーン。小倉演じるヒッピー村の村長のとぼけた言動に三宅演じるベ平連のメンバー・永井が翻弄され、噛み合わないやり取りで笑いを生み出している。……と思いきや、いつのまにか三宅がイニシアチブを取っている状態に。本番さながらのコミカルで意気のあった芝居が繰り広げられ、カンパニーメンバーからも大きな笑い声が上がる。二人の掛け合いの面白さが味わえるのはもちろん、全員がこの作品を楽しんでいる様子が伝わってきた。
村長と永井のシーンはとてもユーモラスだが、ここからラストに向けて怒涛の勢いで物語が展開していく。戦争の不条理さの中で個人に何ができるかを考えさせられるが、人と人とのつながりによって生まれるポジティブなエネルギーに希望を抱くこともできた。
コミカルだが骨太な物語に加え、華やかな歌やダンス、アクションも大きな見どころ。人気歌手として活動する蘭子・桃子・さゆりはアイドルらしい王道ポップソング。ヒッピー村の人々はフォークソング、トミーの逃走を助けてくれる漁村の人々は威勢の良い民謡風の楽曲と、場面ごとに曲調やパフォーマンスがガラッと変わるのも楽しい。場面の転換、各コミュニティのカラー、キャラクターの心情などが一瞬で伝わるため、音楽が持つパワーも改めて感じることができる。
アクションパートは緊迫感のある駆け引きが見応え充分だ。若手からベテランまで入り乱れた熱いシーンに、ハラハラドキドキしながら展開を見守ってしまうはず。
トミーと蘭子のロマンス、脱走劇の結末、周囲の人々のドラマをぜひ劇場で見届け、そこから多くのメッセージを受け取ってほしい。
(取材・文:吉田沙奈)
劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第64回本公演『愛と友情の大脱走 ~ラブ&ピースフォーエバー~』は10月29日~11月8日東京・サンシャイン劇場で上演。
【公演概要】
劇団スーパー・エキセントリック・シアター第64 回本公演 ミュージカル・アクション・コメディー『愛と友情の大脱走 〜ラブ&ピースフォーエバー〜』
10月29日~11月8日:東京・サンシャイン劇場
◆脚本
吉井三奈子
◆演出
三宅裕司
◆出演
三宅裕司
小倉久寛
劇団スーパー・エキセントリック・シアター
◆ゲスト出演
ブレント・オリアン
【公式サイト】https://set1979.com/stage/2026/
【公式X】@SET_1979