膨らむ妄想 『SLAM DUNK』衝撃の連載終了から26年、井上雄彦は新作で何を描くのか
人気絶頂、そしてインターハイ全国大会半ばという、物語の先がある状況で終了した連載。当時、リアルタイムで「週刊少年ジャンプ」を読んでいた読者に与えた衝撃はとてつもなく大きかった。
当時の連載作品は、最終回を事前に告知されることがなかった。なかには1話前の最終コマや柱(余白に入れるキャッチコピー)で告知されるケースもあったかもしれないが、現在のようにニュースなどで報じられるようなことはなく、雑誌を開いて初めて完結を知る…という流れが一般的だった。
それでも、物語の流れから「そろそろ終わりそうだ」と予測できる作品が多かったので大抵は心の準備ができたが、『SLAM DUNK』の完結はまったく予想できなかった。最終回の1話前、高校覇者・山王工業を下すシーンにひとしきり泣いたあと、頭にあるのは「桜木がけがしている状態で次の試合に勝てるのか?」しかなかったのだ。
そして次号、湘北の3回戦敗退が“ひと言”で描かれていることに驚き、最終ページの「第一部 完」を見て再び驚き、さらには単行本で「第一部」の文字が無くなっていることに気付いて三度驚く。「第一部 完」は最終回の途中からうすうす予想できたものの、この3回のサプライズは非常にショッキングだった。
当時は作品の人気が続く限り連載終了しないのが当たり前で、結果的に人気が落ちて完結する作品が、雑誌の表紙になることもほぼなかった。この意識も完結を予想できなかった大きな要因なのだが、人気のピークで完結した『SLAM DUNK』は、最終回掲載号で表紙を飾っていたのだ。
インタビュー&カルチャーマガジン「SWITCH」2002年3月号のインタビューで、井上はインターハイ全国大会が始まるときには山王戦で完結させることを決めていたという。さらに、自身の人生と作品を綴る書籍『漫画がはじまる』では、その理由にも言及。「ある程度、支持を得られた作品であれば、終わり方もちゃんとしなければならない」「すごく面白かった漫画ならば、終わるときには巻頭カラーであるべきだろう」と語っている。