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【レビュー】映画『エゴイスト』鈴木亮平×宮沢氷魚の“恋愛”だけではない、“救いの物語”に注目

映画

関連 :

鈴木亮平

宮沢氷魚

■観客を誘う、“吸い付くよう”なカメラワーク


映画『エゴイスト』場面写真(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
 龍太と出会った浩輔は、彼の容姿やピュアさに加えて、シングルマザーで体の弱い母を大切にする姿に強く惹(ひ)かれた。恋は愛へと変わっていくが、かつて自らを形成していく途中でもっとも愛を注いでほしかった、そして愛を向けたかった母を亡くし、「愛が何なのかよく分からない」と自分に判を押した浩輔は、龍太、そして龍太の母に、お金やお土産を渡す。愛の証ではなく、自分が幸せになるための手段、エゴの表れなのだとして。

 非常にセンシティブな内なる葛藤を、鈴木が細やかに表現してみせる。本作の寄り添うような、ときに吸い付くような密着度の高い手持ちによるカメラワークは、観る者をその場に引き込む魔力を生むと同時に、芝居のわずかな嘘でもあらわにする危険性が伴うが、仲間への顔、仕事場での顔、1人きりのときの顔と、浩輔の顔を使い分けながらも、常に鈴木は“浩輔”であり続けていた。

 また映画オリジナルとして、浩輔の眉を描く行為が非常に印象を残す。後半、阿川佐和子演じる龍太の母親・妙子と会う際に、洗面所に行って、眉を描き足すシーンがあるのだが、このときの鈴木の、溢れ出てしまいそうな感情を押し戻す演技が特に迫った。

■“エゴイスト”という言葉と、新しく出会い直せる映画

映画『エゴイスト』場面写真(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
 そして本作において非常に大きな役割を担っているのが、その妙子の存在である。本作について、特別な恋人との日々が心に残るのはもちろん、自分を見つめる物語であり、加えて「美しい母子の物語だった」と受け取る人もいるはずだ。特に後半、ある場所での一連のシーン。「愛が何なのかよく分からない」と言う浩輔に、妙子が優しく語り掛ける。ここからは非常に重要で大切な言葉が続くので、これから観る方には、ぜひとも自分自身の体で感じていただければと思う。必死に東京で堅い鎧を身に着け自分を覆ってきた浩輔の大きな体と、妙子の小さな体の対比が、母の愛の大きさをさらに際立たせた。

 誰に感情移入するかによっても、かなり印象が変わってくるだろう本作は、あえて誘導線を作らず、複数のテーマを投げかけているように感じられる。ここでは浩輔の“救いの物語”に触れたが、龍太の生きてきた環境についても考えさせられるところが大きい。いずれにせよ、本作を観た人はきっと、“エゴイスト”という言葉と、出会い直せることだろう。(文・望月ふみ)

 映画『エゴイスト』は公開中。

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