『ウィッシュ』最恐ヴィラン・マグニフィコ王の“推せる”ポイント 悲しい過去からかわいい休日の趣味まで
マグニフィコの“推せる”ポイントは、ソロナンバー「無礼者たちへ」に詰まっている。一言で言うと、「自己肯定感高すぎてかわいい」のだ。
マグニフィコの自己評価ワードを抜粋すると、「無礼者たちへ」の日本語版歌詞からだけでも「鏡さえ私に見とれる」「なんてハンサム!」「名前だって素晴らしい」「情熱的」「だけど冷静」「そして誰より慈悲深い」「キュートで強く大胆不敵」…もう分かった分かったと抱きしめたくなってしまう。
また、本歌詞にはマグニフィコの貴重なプライベート情報も。なんと、一国の王でありながら「休日の趣味はボランティア」なのだ。趣味ということは政治的アピールではなく本当にボランティアが楽しいのではないだろうか、と予想すると、これもまた推せる。
歌詞を紐解いていくと、自分も国民もとにかく大好き、というのがマグニフィコの賢王たる所以(ゆえん)だったのではないかと感じる。しかし「無礼者たちへ」の後半、ついにマグニフィコは自ら封じていた“禁じられた書”を開いてしまう。闇の力が詰まった書に心を染めていく姿は見ていてつらいが、この書を封じてはいたものの葬らずに手元に残していたことが、完璧なマグニフィコの“弱点”だったのではないか。自分で並べた賛辞の言葉は、もしかするとたった1人で国を築き上げた彼の孤独な心を守る鎧だったのかもしれない。もし本当に心から自信を持てていれば、禁じられた書も手放せていたかもしれない、と思ってしまう。
■弱さを見せられる人がいれば結末は違った?
完璧で誰もが愛するマグニフィコ王…彼はロサスの国民が大好きだったはずだ。休日に趣味でボランティアをしているくらいだから、そこは確信が持てる。しかしいつの頃からか、彼は“求められる”だけの存在になっていった。しかし、弱みを見せればまた両親のように幸せを奪われるかもしれない。そんな彼は、いつしか弱さを見せられる相手がいなくなってしまったのではないかと思う。王妃・アマヤにすら本当の姿を見せられず、孤独に苛まれ、そして目の前にある禁じられた書に手を出し……いや、マグぴ可哀想すぎる。
願いなんて叶えてくれなくていい、愛してあげなければ。こう思わせたことこそ、マグニフィコ王が人気を得た理由なのだと筆者は考える。そして筆者自身も、マグぴを愛する1人だ。彼の結末はあまりにも救いがないが、彼なくしてロサスの平和が保てるかというと疑問だ。アマヤ王妃、早めにマグぴを許してあげてほしい。そして彼が本当の意味で愛されることを願うばかりだ。(文・小島萌寧)
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