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中田秀夫監督、“恐ポップ”で新境地開拓! 『事故物件 恐い間取り』『恐怖新聞』にSNSにぎわう

映画

◆さらなる“恐ポップ”の進化を目指す『恐怖新聞』!

 中田監督は現在放送中のテレビドラマ『恐怖新聞』で、さらに“恐ポップ”に磨きをかける。原作は恐ろしさのあまり、昭和の子どもたちを不眠地獄に追い込んだつのだじろうの名作恐怖漫画だが、こちらも中田流の現代風アレンジが見どころ。

 一人暮らしを始めた詩弦(白石聖)の部屋に、深夜零時に激しいノックの音と共に投函される謎の新聞。そこにはこれから起こる惨劇と、被害者の死が予言されていた。やがて、紙面に詩弦の父(横田栄司)の死を告げる記事が…(第1話より)。

 視聴者を飽きさせない怒とうの展開がテレビドラマの肝だが、今回の『恐怖新聞』は起承転結の「承」をあえて飛ばして描いている印象がある。映画であれば「不気味な怪現象が続く」→「なぜだろうと独り思い悩む」→「実は呪われていたことが判明」→「しかも、それは肉親の仕業だった」という展開をとり、「なぜだろうと悩む」=「承」の部分で想像を巡らす時間を設け、じんわりと恐怖感を出すが、そこを描き飛ばすことで視聴者の先読みをコントロールし、中毒性のあるスピード感とある種のポップさを醸成している。

 第1話では、ヒロインの詩弦が親しくなったバイト先の先輩(佐藤大樹)と突然“濃厚キス”を交わす場面があり、母(黒木瞳)との気のおけない親子の会話中にも、いきなり「お父さんは前世でロクな死に方をしていない」と厭(いや)なセリフが差し込まれ、ギョッとさせられる。これも本来なら「承」の部分で平穏に話を進める構成に、あえて違和感を感じさせる要素を投入。ついツッコミを入れたくなる不穏な空気感を出し、“恐ポップ”な演出を狙っているのではないだろうか。

 超自然的な「恐怖新聞」の怪異と、それに浸食されてゆく「人間たちの恐さ」は、中田監督が『リング』シリーズの最新章『貞子』(2019)で用いた「呪いの震源地となる貞子」と「その呪いに触れてしまった被害者の狂気」を表裏一体に描く展開を連想させる。

 『恐怖新聞』では第1話から「笑顔で落下してくる飛び降り自殺の女子高生と目が合う」など、中田監督の十八番であるショッキングなキラーショットが連打されるが、一番の話題をさらったのはオカルトホラーの金字塔『オーメン』(1976)をモチーフにした串刺し惨死シーンだ。SNS上では早速、「いや、あれはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)に登場する謎の武器、ロンギヌスの槍だ!」と我流の解釈がにぎやかに飛び交っている。

 ロンギヌスの槍は元々「十字架に磔にされたキリストの生死を確認すべく、わき腹を刺したとされる槍」なので、反キリストの誕生をテーマにした『オーメン』との縁も深く、どちらが元ネタであっても構わないのだが、おかげで『恐怖新聞』の第1話はツイッターでトレンド入りを果たし、改めて“恐ポップ”はSNSとの親和性が高いことを証明した。

 「恐さ」を描くためには緊張感を積み上げることが大事。一方で「笑い」はそれを突き崩すことだ。恐さと笑いは紙一重ではあるがゆえに、そのバランス感覚、演出のさじ加減は難しい。“恐ポップ”で難易度の高い新境地に挑んだ中田監督。その進化の先がとても楽しみだ。(文・山崎圭司)

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