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シュワルツェネッガー熱演 狂い咲くバイオレンス! 常識を超えたSF映画『トータル・リコール』

映画

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アーノルド・シュワルツェネッガー

ポール・ヴァーホーヴェン

■シュワルツェネッガーが熱望したヴァーホーヴェンとのタッグ

 小説『追憶売ります』の映画化権を買ったのはダン・オバノン。盟友ロナルド・シュセットとともに『エイリアン』(79年)の脚本を書いて一世を風靡(ふうび)した才人だ。このコンビがディックの小説の実写化に取り組み始めて以来、デヴィッド・クローネンバーグを含む何人もの監督がプロジェクトに関わり、そして現場を去っていった。映画化権の取得から実に10余年、さまざまな要因からいよいよ企画が暗礁に乗り上げたとき、ついにシュワルツェネッガーが名乗りを上げた。実は80年代初頭から主演の座を狙っていたが、オーストリアのボディビルダーがディック原作のSFなど、と、当時は一笑に付されていた。いまや十分以上に力をつけ、その鶴の一声があれば通らない話はなくなっていた。かくして巨額の製作費を投じた未曾有の超大作が動き始めたが、そこでシュワルツェネッガーが監督に指名したのがポール・ヴァーホーヴェンだった。

(C) 1990 STUDIOCANAL
 『危険な愛』(73年)に『女王陛下の戦士』(77年)、『スペッターズ』(80年)。いくつもの傑作で映像表現の限界を突破し続けた結果、祖国オランダに居場所がなくなったヴァーホーヴェン。アメリカ進出を果たして以降は『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』(85年)、そして言うまでもなく『ロボコップ』(87年)で観客の度肝を抜き続けた。シュワルツェネッガーは特に後者を観て、いたく感銘を受けていた。ヴァーホーヴェンとしてもこの超・肉体派俳優に大いに魅力を感じ、結末さえ決まっていない映画作品の監督依頼をふたつ返事で受けた。バイオレンスを絵に描いて豪華な額に入れたようなシュワルツェネッガーは、おそらくヴァーホーヴェンとしても血と暴力にまみれたエクストリームな世界を描くにあたって、実に得がたい存在だった。いままで誰も見たことのない世界のなかで自らの正体を求めて爆走する男を、全力で描き出すヴァーホーヴェン。その熱に呼応して、シュワルツェネッガーもあらゆる場面で全力の芝居を見せた。走って殴って撃ちまくり、うなり、苦悶し、絶叫し続けるアクション・ヒーロー。数多ある主演作品のなかでもトップクラスの熱演に、思わず胸が熱くなる。

(C) 1990 STUDIOCANAL
 結果として現れた『トータル・リコール』は、おそらくふたりが思い描いた以上に何もかもが過剰でありながらいっさいの無駄がなく、かつ何度観ても夢幻のような物語に翻弄されるしかないという、まさに奇跡のような作品に仕上がった。実は本作以降も続く予定だったヴァーホーヴェン&シュワルツェネッガーの最強タッグ。いろいろあって結局これきりになってしまったことは返す返すも惜しいことだが、唯一のコラボレーションたる『トータル・リコール』はそれぞれのキャリアにおける頂点といって差し支えはないはずだ。30年前に起こった奇跡に触れるチャンスがやってくる。かつて観た人も、または初めて観る人も、ぜひ劇場でその途轍もなさを体感していただきたい。(文・てらさわホーク)

 映画『トータル・リコール 4Kデジタルリマスター』は公開中。

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