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“遅咲き韓国俳優”ユ・テオ 『パスト ライブス』脚本を読んで泣いた“2つの理由”を明かす

映画

■「自分の経験が本作に反映されている」

テオ:まずヘソンとアーサーには、お互いの状況を理解して共感できる部分があると思っています。それぞれ違う文化の下で育っているので100%は理解できないと思うのですが、同じ女性を好きになる時点で、お互いにリスペクトと理解があるということをベースに演じました。

実はアーサーを演じたジョン・マガロとは、リハーサルでも会ったことがなくて、ノラとアパートで初めてアーサーに出会うシーンの撮影が、僕とジョンの初対面でもありました。僕たちは、この作品に対する思い入れや好みなどが似ていたので、会った瞬間に、言葉に出さなくとも、役者として非常に信頼できると感じました。役者としてもキャラクターとしても、リスペクトを感じることができたので、とても演じやすかったです。

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――テオさんは、韓国人の両親を持ち、ドイツで生まれ育った後、アメリカやイギリスで演技を学び、韓国を拠点にするという唯一無二のキャリアの持ち主です。そんな自身の経験は、複雑なアイデンティティーを描く本作において役立ったと感じますか?

テオ:そうですね。いろんな文化を経験して、3つの言語を自由に操れることは、すごく有利に働いていると思います。名前が知られるようになるまでに、15年間仕事をしてきた韓国以外で、日本やロシア、ベトナム、中国などさまざまな国の作品に参加させていただき、現地の文化を経験したことで得られたものも多かったです。この経験がインスピレーションとして本作に反映されているのは強く感じています。

1つ例を上げるとすると、英語には「vulnerability」という言葉があり、直訳すると「繊細さ」や「もろさ」という意味なのですが、日本語や韓国語では、あまりうまく訳すことができず、レイヤーをめくっていくような言葉になるんです。ドイツ語でも訳すのが難しく、「壊れやすい」というような意味合いになります。

このように、僕は文化が異なると言語化しにくくなる体験をよく分かっているので、ある感情を表現する時に、別の言語で言い換えができるというのは、さまざまな国を転々としてきたからこそ有利に働いていると感じます。いろんな色を使い分けることができ、さらに混ぜることもできるカラーパレットのように言語を操れるのは、恵まれた環境にいて他の人では経験できなかったことだと思います。

一方で、転々としてきたことで常にアウトサイダーだと感じており、寂しさを感じる時もありました。そんな感情までもが、この作品にプラスに働いてくれたんじゃないかなと思っています。

(取材・文:阿部桜子)

 映画『パスト ライブス/再会』は公開中。

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