『JUNK HEAD』堀貴秀監督「自分の映画を新しいジャンルとして確立したい」 実写×コマ撮り作品の構想も

本職は内装業、映画制作は独学――そんな異色の経歴を持つ孤高のクリエイター、堀貴秀監督。2021年公開のSFストップモーションアニメ映画『JUNK HEAD』は、世界中の映画祭を驚愕させ、鬼才ギレルモ・デル・トロ監督も絶賛。そして4年、さらなる深化を遂げた続編『JUNK WORLD』が6月13日に公開。物語の舞台は、『JUNK HEAD』の1042年前――地下世界で新たな冒険が始まる。今回は、その創作の秘密に迫るべく堀監督にインタビュー。じっくりと話を伺った。
【写真】撮影に使用した“人形&セット”がいたるところに! 制作現場ショット(53枚)
■影響を受けたSF作品の数々
堀貴秀監督
――前作『JUNK HEAD』は多くの賞賛を集めましたが、特に嬉しかった反応は?
堀監督:まず、ギレルモ・デル・トロ監督に僕の名前を呼んでもらえたことですね。『マッドゴッド』(2021)のフィル・ティペット監督とは対談もして。方向性はちょっと違うけど「僕らは同じ卵から生まれた」なんて言ってもらえた。ゲームデザイナーの小島秀夫さん、画家のヒグチユウコさんに熱烈に応援して頂けたのも嬉しかったです。
――前作の成功で大きく変わった点は?
堀監督:自信がつきました。この映画は最初から3部作構想でしたが、本当に出来るのか自分でも半信半疑で。1作目の『JUNK HEAD』が公開された2021年はコロナの真っ最中。興行も思ったようにいかず、配信で一気に評価されて、今回ようやくビジネスとしても成果も出せる段階になったのかな、と。
――本作『JUNK WORLD』は思い描いていた通りの仕上がりになりましたか?
堀監督:いやぁ、全然(笑)。創作は妥協の連続ですが、元々「この予算で望み通りの世界観を創るのは不可能」というのが出発点なので、あとはどこまで頑張れるか。試写で何度か観ましたが、色々と気になって。可能なら撮り直したいです(笑)。
映画『JUNK WORLD』場面カット (C)YAMIKEN
――独自の世界観を示した前作『JUNK HEAD』に対し、『JUNK WORLD』は物語面を掘り下げた印象ですね。
堀監督:最初は30分の短編を10本作る構想からスタートしたんです。『JUNK HEAD』はその短編を膨らませて長編化したので、構成面にやや無理があった。一方、今回は始めから長編映画としての企画で。ただ、『JUNK HEAD』は2017年に完成後、お蔵入り状態の時期が4年くらいあって。その時点で「続編」を作っても意味がない。それなら前日譚にして、仮に『JUNK HEAD』が世に出なくても2本目を単独で観てもらえるように考えたんです。
映画『JUNK WORLD』場面カット (C)YAMIKEN
――今回の『JUNK WORLD』はマルチバースやタイムゲートが登場し、「質量のないAIの魂なら同次元に存在できる」など、SF的な要素を強く感じました。監督が特に影響を受けたSF作品はありますか?
堀監督:昔から言っているのは『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)です。あとは『エイリアン』(1979)。『猿の惑星』(1968)シリーズにも無意識に影響を受けているかも。ただ、SF系の作品は世界観を定着させるのに時間を使ってしまうことが多い。映画としては人間ドラマを描く『バグダッド・カフェ』(1987)や『ショーシャンクの空に』(1994)、邦画なら『仁義なき戦い』(1973)が好き。僕自身が目指すのも、視覚的に楽しいだけではなく、キャラクターの心情を感じられる映画です。
――何度も観返す「神映画」はありますか?
堀監督:たまに観返すのは『スカーフェイス』(1983)。「成りあがる」アツい感じが好きで、作業に立ち向かう活力になっているかも。絵作りの参考に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)も観ました。普段、監督名はあまり意識しませんが、最近注目しているのはアリ・アスター。それから『第9地区』(2009)のニール・ブロムカンプにも期待しています。