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中井貴一、縁のある小津安二郎役挑戦 中井家に伝わる小津イズムは「粋である」ということ

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◆中井貴一が考える自身のエポックとは?



――中井さんは来年デビュー45周年を迎えられます。10人に聞いたら、10人が違う作品を挙げるのではないかと思うほど、代表作がたくさんありますが、ご自身が考えられるターニングポイントになった作品はどの作品になりますか?

中井:僕は19歳でデビューして、どこにも所属せずに自分で会社を作ってやってきたんです。それは、僕の中に役者としての素養があるとは自分で思わなかったし、絶対できないって思っていました。何かのご縁でこの仕事を始めたんだったら、とにかく量をやることよりも1つずつしっかりやっていって、その中で得るものを得ていこう、それが自分が勉強していく道筋だと思ったんですね。

30歳という年齢までは、すべてが役者という仕事を吸収する時間だと自分で決めて。結婚もしないし、絶対にこの10年の中で、役者というものがどういうものかというベースを作ろうというのが最初の10年だったんです。マネージャーがいて仕事を取ってくるという作業はしたことがないので、いただける仕事を1つずつ1つずつやっていきました。

ものすごく変な話なんですけど、もちろんヒットした作品っていうのはたくさんあるんです。ドラマ『ふぞろいの林檎たち』、大河ドラマ『武田信玄』など、でもそれだけが自分のエポックになっているかっていうと、そういう事でもないのです。だから一本一本魂を込められるものを選んでやらせていただいてきたので、すべてがチェンジ、エポックになっているんです。

――『ふぞろい~』も大河ドラマの主演もデビューから10年経ってないころなんですよね。

中井:今につながっているのはあの10年があったからだと思います。ものすごく厳しかったですから。今の人たちがあの時代にワープして、ドラマの収録現場を見たとしたら絶対に無理って言うと思います。パワハラの嵐でした(笑)。今の人たちはパワハラって言うかもしれないですけど、僕たちにとっては「教えてもらった」。そんな時代にやれたことが今の僕に経験を残してくれていると思うんです。いい経験だったんですよね。本当はそういう経験をすることも、後々プラスになるはずなんですけど、時代が違うんですかねー。人間ってそんなに変わってないように思うのですが…(笑)。


――悪い意味で「昭和」と言われることが多いですが、「昭和」ならではの良さもたくさんありましたよね。

中井:最高だったと思います。負の遺産もたくさんありますが、「負」って悪いばかりじゃないですからね、人間に与えるものって。体に悪いものっておいしいですし(笑)。健康を考えるならば、すごくいいものばかり食べたらいいけど、そうすれば病気にならないかって言ったらそうでもない。

『風のガーデン』というドラマをやった時に、先輩たちがたくさんいらっしゃったのですが、大滝秀治さんが「健康と元気は違う。健康ってのは数値だ。いくら数値が良くても元気じゃない奴はいる。数値が悪くても元気な奴もいるんだ。どっちが大事かって言ったら、数値が悪くても元気なじじいがいいんだ」とおっしゃっていたんです。その通りだと思うんですよね。「負」も自分の栄養にしていくということをこれからの世代の方も持ったほうがいいと思うので、今回の舞台を通して昭和の良さも伝えていけたらいいなと思います(笑)。

(取材・文:佐藤鷹飛 撮影:松林満美)

 パルコ・プロデュース 2025『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』は、東京・PARCO劇場にて6月8~29日、大阪・森ノ宮ピロティホールにて7月5~7日、福岡・J:COM 北九州芸術劇場 大ホールにて7月11・12日、熊本・市民会館シアーズホーム 夢ホールにて7月15日、愛知・東海市芸術劇場 大ホールにて7月19・20日上演。

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