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佐倉綾音が語る“信頼”と声の力――誰かを救う、その一言の先にあるもの

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■久しぶりでも通じ合える関係こそが信頼

――“信頼”がテーマのひとつとなる本作ですが、佐倉さんにとって“信頼”とは?

佐倉:私にとって“信頼”は、お仕事と密接に結びついているもので、「9割は信頼で成り立っているのでは?」と思うくらいです。社会に出るまでは「実力がすべて」と思っていた節があったのですが、実際に働いてみると、それだけではない現実に直面して。

たとえば、「なぜこの人はお仕事が途切れないんだろう?」と感じるような方も、近くで見てみると、積み重ねてきた信頼の力がちゃんとそこにあったりする。目には見えないけれど、周囲との関係性や人柄から生まれる“説得力”が、たしかに存在しているんです。

私自身も、このお仕事は人と人との関係なしには成り立たないものだと日々感じていて。だからこそ、信頼関係でつまずかないように、自分の実力をしっかりと発揮するためにも、信頼が足を引っ張ることのない状態を保つこと。それをずっと大切にしています。

――その状態を保つために日頃から心がけていることはありますか?

佐倉:少し極端な話をすると、ある意味“お金で買える信頼”というのも、一部にはあると思っていて。たとえば、誰かとの約束に遅刻しそうになったとき、電車だと間に合わないけど、タクシーを使えば時間通りに行ける。でもタクシー代はちょっと高い……。そんなときに、迷わずお金を使えるかどうかって、相手との信頼をどう捉えているかが問われる瞬間だと思うんです。

時間を守るって、とてもシンプルだけど、それだけで信頼が築かれたり、逆に失われたりするものだから、その“お金で補える信頼”の部分に関しては、なるべくケチらないようにしたいなと思っています。

――「時は金なり」と言いますが、相手の時間を無駄しないという感覚は大切ですよね。お金は大切なものだけど、信頼のように“かけがえのないもの”ではないというか。

佐倉:そうなんですよね。お金はすごく明確で、みんなが共通の基準で理解できる“絶対的な価値”を持っている。でもその存在があるからこそ、逆に“お金では測れない価値”の重みが際立つ。それはまるで、光と影のような関係というか。

どちらか一方だけでは成り立たない、互いを際立たせるために必要な存在。お金があるからこそ見えてくる、人の思いや、信頼、時間といった“かけがえのないもの”の価値。それがきちんと、この世界にはあるんだなと、しみじみ思います。だからこそ、自分が少し我慢することで目の前の信頼を保てるなら、それはもう迷わず差し出したい。

ただ、お金ではどうにもならない信頼のほうが、ずっと難しいんですよね。私はそこにこそ、本質があると信じているので、その部分に関しては努力を惜しまないようにしています。

一方で、そうした「信頼を大事にしなくては」という気持ちに固執しすぎて、逆に自分が疲れてしまうこともあると思うので、相手との関係の中では、あまり過剰な期待を抱かせないように、最初から自分のスタンスを示しておくことも必要なのかなと思っています。


――20代から30代になり、そうした人付き合いや価値観の面の変化を感じることはありますか?

佐倉:そうですね。人間関係って、本当に日々触れるものだからこそ、自分の中でも価値観のアップデートは常に必要だなと思っていて。特に今は情報化社会の中で、みんなが絶えず何かを考え続けている時代。そんな中で「価値観はずっと変わらないもの」と思い込んでしまうと、どこかで歪みが生まれてしまう気がするんです。

たとえば、学校のレクリエーションとかでやった“マイムマイム”ってあるじゃないですか。音楽が流れている間にぐるぐると組み合わせが変わっていって、音が止まったときに隣にいる人とペアになる……あれって、ちょっと人間関係にも似ているなって感じるんです。

今、目の前の人と価値観が合っているからこそ一緒にいられる。でも、音楽がまた鳴れば、相手は別の人と手をつなぐかもしれないし、自分だって違う方向に進むかもしれない。それは、悲しいことではなくて、自然な流れなんだと思うんです。人は変わっていくし、価値観も変わっていく。だからこそ、「今、この瞬間」をちゃんと大事にできたらいいなと思います。

自分の目の前から何かがなくなったときも、「どちらかが悪い」とか「裏切られた」とかではなくて、ただ、その時期が終わったんだと、静かに受け止める。その大切さを、ここ数年ですごく学びました。

――信頼と依存は紙一重みたいなところもありますからね。

佐倉:ありますね。もしかしたら、過去に私が信じていた信頼も、どこかで依存に近いかたちになっていたのかもしれない。そう思う瞬間が、やっぱりあるんです。でも、だからこそ最近は、“本当の意味での信頼”ってどういうことなんだろうと、改めて考えるようになりました。

その中で、私が一番信頼に近いなと思えるのが、たとえば、3年くらい連絡を取っていなかった幼なじみから、ふと「ヤッホー、久しぶり、ごはん行こうよ」って連絡が来るような関係。喧嘩したわけでもなく、ただ時間が流れていただけなのに、まるで3ヵ月前まで連絡を取っていたかのように自然と会話が始まる。あれって、すごく素敵だなと思うんです。

実際に会って、「最近こんなことがあって」「私はこんなふうに生きているよ」とお互いの近況をシェアし合う。新しい価値観や考え方をすり合わせながら、「ああ、今はそうなんだ」「私もこんな感じだよ」って、また新しく自己開示していく。それで、「またね」って自然に別れて、また次につながる。そういう関係って、本当に自立した信頼関係だなと思うし、私はそんな存在をすごく尊く、ありがたく感じています。

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■視聴者のひと声が、現場をひとつにする――“救い合い”としてのエンタメ

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