スピルバーグ監督の『ジョーズ』がすばらしい理由とは? 『ジュラシック・ワールド』コンビが語る映画作りで大切なこと
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※以下、恐竜についてのネタバレがございます。
──「Dレックス」や「ミュータドン(Mutadon)」の話もお聞きしたいです。とにかくビジュアルが印象的でした。
ギャレス:もちろん脚本の中で「こういう姿」ってことは言及されています。だからビジュアル化の過程は、例えるなら犯罪を目撃して警察署で事情聴取を受ける時、「犯人はどんなやつだったか」って聞かれながら職人に似顔絵を描いてもらう、みたいな感覚でしたね(笑)。そして僕にとってホラーにおいて興味深いことは、観客に何かを提案してもそれを“見せない”ことです。観客は怖いと言う。「では何が怖いのか」と聞くと、「クリーチャーが怖い」と言うんです。「ではなぜそれを怖がるのか、それがどのように見えるのか」と聞いても、彼らはそれを描くことができない。何らかの感情を抱えていても、それが何なのかわからない。そういう風に、どんなものかわからない方が強力なものになるんです。
だから映画の中でモンスターを完全に明らかにしようとすることは、逆効果だと個人的には感じます。観客の想像力は、おそらく最も大きな武器となるから。私の友人に『ダーク・ナイト』や「ハリー・ポッター」シリーズなど多くの大作を手がけたクリーチャーデザイナーがいるんですけど、彼はデザインのことを「まるでディズニーワールドで最後の駐車スペースを探しているようなものだ」と言っていました。すばらしいモンスターのデザインを作っても、まだ誰もやったことのないデザインがあると誰かが無責任に言うものだから、まだ空いているスペースがあると思って探してしまう。しかしそうすると、スペースは見つからず、ぐるぐる駐車場を回っているだけになってしまうと。
映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』場面写真 (C)2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
──興味深いですね。
ギャレス:Dレックスは僕の頭の片隅になんとなくビジュアルがあって、想像ができました。しかし、ミュータドンはどこから始めればいいかわからないくらい、難しかった。実は映画の制作を始めた初日、最初に会議をした会社はおもちゃ会社のマテルだったんです。「なんで?」って聞くと「おもちゃ制作のために(恐竜の)デザインがどんな見た目か、知る必要があるから」と言われた。「でも、デザインもまだないんだけど」と僕が答えると、急いで作らなければいけなくなって。意見もいろいろと分かれて、スタジオ、僕、制作を担当するILMのメンバーのみんなで合意するものを探しました。それが、最終的にシンプルな、プテラノドンとラプトルのハイブリッドのようなデザインに落ち着いたのです。僕にとっては本物の恐竜に感じられる、骨が見つかりそうなくらい実際にいても納得できるものでした。納得できないと、結局ずっと“ぐるぐる回る”ことになるんですよね。
──前シリーズの『ジュラシック・ワールド』にも遺伝子組み換えによって生み出されたキメラ恐竜は登場していましたが、本作のこの2体は少し違った印象を受けました。最後に彼らはどのような背景で本作に登場したのか教えていただけますか。
デヴィッド:私たちは動物というより、モンスターに近い存在を作りたいと考えていました。遺伝子操作を通して、『フランケンシュタイン』の物語を語り続けていきたかったからです。その過程で、私は彼らから「悲しみ」という感情を感じました。この哀れな生き物たちは、変形し、機能しなくなった体の中に閉じ込められてしまっていると。それは彼ら自身のせいではない。そのため、彼らの怒りや貪欲さは単に誤解されているだけなんだと思うんです。そういった感情は彼らのデザインや、劇中の描かれ方、登場シーンで背景に流れる音楽にも強く表れていると感じました。彼らは、“我々が作り出した”クリーチャーであることを忘れてはいけないのです。
(取材・文:アナイス/ANAIS)
映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』は公開中。