作曲家・林ゆうき、ドラマ&アニメ“劇伴”の名手が曲作りで大切にする新体操選手の頃の感覚
アニメ『SAKAMOTO DAYS』『メダリスト』、ドラマ『ストロベリーナイト』など、数多くの作品の音楽を手がける作曲家・林ゆうき。劇伴(ドラマやアニメの劇中音楽)を生演奏と映像で楽しむコンサート「劇伴食堂」が、約4年ぶりに第4弾として開催される。作曲家本人が思い描いたシーンの映像を、楽曲に合わせて編集して流すという独自のスタイルは、どのように生まれたのか。創作の根底にある経験や曲作りの裏側、今回の聴きどころまで、話を聞いた。
【写真】劇伴への熱い思いを語る林ゆうき
◆ドラマやアニメの音楽を気軽に楽しめる食堂のようなコンサート
――「劇伴食堂」も第4弾となりますが、どんなコンセプトで始められたのか、改めて教えてください。
林:劇伴というのは、日本特有のスタイルだと思っているんです。海外の場合は映像に合わせて作られることがほとんどですが、日本の劇伴は多くの場合、音響監督さんや選曲家の方からいただく短いテキストやプロットなど、映像のない状態から作っていきます。その際、バトルや恋愛のテーマ、コミカルなシーンなどを想定して、楽曲に起承転結を作って、どこに当ててもおかしくないよう、頭とお尻の流れをちゃんとさせた形で作るんですね。だから曲だけになっても聴き応えがあって、サウンドトラックとしてそのままリリースできる。それが、日本の劇伴の大きな特徴で、メリットだと考えています。
ただ作曲家は、ダビングに立ち会わない限り、自分の曲がどこで使われるのか、放送を見るまで分からなかったりするんですよ。使う場所を決めるのは音響監督さん。ですが「劇伴食堂」では、ドラマについては音楽そのものを楽しんでいただく形になりますが、アニメに関しては映像をお借りし、僕らの曲に合わせて映像を編集して映しています。普段とは逆ですね。MVに近い形なので、アニメのコアなファンの方には、「この曲にこのシーンが合うと、こんなふうに見えるんだ」という、他では体験できない状態を見ていただけると思います。
――そうした劇伴制作の過程は、一般にはあまり知られていませんよね。
林:そうなんです。視聴者の方は完成版しか見られませんから。SNSを見ていると、印象的なシーンの線画のラフが出ることはあっても、音楽でそれがあるかというと、ほとんどない。映像と音楽が一緒になった完成版と、本来流れているはずの曲が違うものを見比べる機会なんて、まずありません。曲が違うだけで全然違うふうに見えるという体験ができたらいいなと思い、映像をお借りしてお届けしています。
――「食堂」という名前には、どんな思いがあるのでしょう。
林:僕は、高級レストランの凝り固まった感じというより、いろんな人が来てくれる“定食屋さん”のような感じで、自分の音楽を楽しんでもらいたいんです。ドラマやアニメって、人々の生活に根づいているものだし、堅苦しいものじゃなく、普段のちょっとした時間に楽しむもの。その音楽を彩る僕らも、気軽に楽しんでもらえる食堂みたいなスタイルがいいなと思って、「劇伴食堂」にしました。
――大衆食堂には和食、洋食、中華といろいろ揃っているように、映画、ドラマ、アニメといろんなジャンルの劇伴を手掛けていらっしゃる林さんらしいコンセプトですね。生演奏でお届けできることについては、どのように考えていらっしゃいますか。
林:演奏はバンドにオーケストラを混ぜるスタイルで、どんなミュージシャンの方がどんな演奏をして、どんな音が鳴っているのかを、実際に見ていただけるのはすごく大きいですね。音楽だけを聴くよりも、体験としてすごく面白くなるはず。アニメの映像と、奏者さんの演奏と、同時に楽しんでもらえる機会になればと思っています。
