作曲家・林ゆうき、ドラマ&アニメ“劇伴”の名手が曲作りで大切にする新体操選手の頃の感覚

――幅広いジャンルの楽曲を手掛けていますが、曲作りにおいて芯になっているものは?
林:僕はもともと音楽をやっていたわけではなく、男子新体操をやっていました。フィギュアスケートのように、伴奏曲に合わせて踊る競技です。その選手だった頃の感覚は、今でもすごく大事にしています。
作曲家になると、「自分の音楽を聴いてほしい」が前提に来がちですが、僕は、映像と一緒に流れたときにどうなるのが一番いいかを常に考えています。選曲家や音響監督の方がどうすれば使いやすいか、映像がさらに盛り上がるか、ですね。だからリクエストに書いていなくても、尺が長くなったときに耐えられるよう、もう一段階盛り上がりを作っておく、みたいなことがよくあります。
新体操選手は、自分のための曲を種目の数だけ選びます。大好きな曲や、「この曲で踊りたい」と思うキャッチーなもの、ダンサブルなもの、すごく感動的なもの――それを、チーム全員が持ってくるんです。チームメイトが10人いたら、普段から50曲くらいを聴いている状態ですね。試合に行けば、さらに膨大な数の曲を聴きながら踊る。その環境にいたおかげで、メインテーマやキャッチーな曲を作ることに、あまり苦しみを覚えずに済んでいるのかなと思います。「こっちがいいかな、あっちがいいかな」と迷うときも、踊っていた頃の感覚が絶対にぶれないよう、とても大事にしています。
――気持ちよく体が動く、音にフィットするような感覚が、今も残っているんですね。
林:残っているというか、勝手にやってしまうというか(笑)。体を動かして、どう心地いいかを体が覚えているので、それがすごく役立っているんでしょうね。
――作品に寄り添うために、どんな素材から着想を膨らませるのでしょう。
林:作曲家の人って、だいたいそういう想像力がある人がなっていると思うんですよ。妄想癖がある、というか(笑)。数行の文字から曲のイメージを読み取って作ることがほとんどなので。映像ができているというより、キャラクター設定や、声優さんがどなたか、「いずれこうなっていきます」という設定をいただいたり、台本、準備稿も含めて読んだりして、そこから紐解いて、それぞれの曲を作っていきますね。
