中村獅童、白無垢に込められた亡き母の思い 後悔を胸に映画『振り子』と向き合う
今作のような“普通の人”を演じる上で獅童が大切にしているのは、リアリティ。「演じる役柄を作るのではなく、役が自分に降りてくるのを理想」とする憑依型を目指しているだけに「今まで泣こうと思って泣いたことは一度もない。『ここで観客を悲しませよう』と思った瞬間、それは演じる役ではなくて自分の気持ちになってしまうから、そこで嘘が出る。その意識は歌舞伎でも同じ」と、自らの感情と役柄の感情のシンクロを心がけている。
母親の死に対する思いと芝居に対する哲学が混ざり合った結果、生まれた『振り子』。手応えを得た獅童は、パブリック・イメージを優先させる芸能界の風潮にも一石を投じる構えだ。「イメージを大切にするのは、失敗が怖いから安泰を選んでいるだけ。僕はいつでも素っ裸で、恥をかくことを恐れずにいたい。そうしなければ何も切り開けないから」と攻めの姿勢。単なる無鉄砲さからの発言ではない。
「40代になって心に余裕が出来て、僕と同じように『負けてたまるか!』と30代を突っ走って 来た他業種の人たちの存在に気付いた。戦友のように思えるそんな人たちと組んで素晴らしいものを作りたいし、だからこそ自分も頑張れる」と広い視野を得ているからだ。
映画『振り子』は、2月28日より全国公開。