『孤独のグルメ』が愛される理由は? 原作者・久住昌之に聞いてみた
ドラマ版に関しては、「漫画の延長というか、バリエーションの1つだよね」と話す久住。本作のプロデューサーは10年近くドラマ化実現に動いていたという。「それだけ長く読み込んでいるんで、感覚をわかってくれてるんだよね。あと、松重豊さん(井之頭五郎役)も話してみたら、似た感覚を持っている人で、“地方ロケでも、ロケ弁でなく、食べログなどにも頼らず、自分で歩きまわってお店を見つけてる”って言ってましたしね」。久住の想いは、スタッフ・キャストにも行き渡っているようだ。
老若男女、国境を越えて、グルメは共通の言語。そういった話をしているうちに、久住の口から意外な言葉が飛び出した。「ただ、僕はこの漫画のことを一度もグルメって思ったことがないんだよね。冗談で、わざとグルメっていう言葉を使ったんです。お腹が空いたときに、“どうしよう。どこで食べよう”って迷ったり困ったり、初めての店に入るドキドキ感とか、誰にでもあるようなことがこの漫画なんで…僕はそういうのが面白いと思うんですよ。だから、B級グルメとか、名物とか特産物は関係ないんだよね」。
久住の眼光がきらりと光った。「“飯とおかずのせめぎ合いだ”とかさ。食べることぐらいで大げさになるのが面白いじゃない? 例えばさ、弁当食う時にご飯が足りなくならないようにしたりするじゃない。そういうの、傍から見たらバカみたいだなって。端から見るとそいつは弁当を食ってるだけなんだけど、心の中には大波乱があると思うと、面白いじゃない」。
谷口ジローのリアリズムに迫る殺風景な作画や、松重の渋い表情から吐き出される大げさな台詞によってギャップが起こり、食を通したドラマが生まれる。表面上では誰も気づかない一個人の悲喜劇。これが本作の魅力に繋がっているのではないだろうか。(取材・文・写真:梶原誠司)
『孤独のグルメ Season4』はテレビ東京系列で毎週水曜23時58分から放送。