イタリアで注目浴びた「アマンダ・ノックス事件」映画化 、松江哲明監督が見所を語る

関連 :
映画『天使が消えた街』(9月5日公開)の公開直前記念トークイベントが24日、都内にて行われ、映画監督の松江哲明氏と、映画評論家の柳下毅一郎氏が登壇。作品の見どころなどについて語り合った。
【関連】『天使が消えた街』公開記念トークイベントの様子<フォトギャラリー>
イタリア犯罪史上最も国際的な注目を浴びた、実際の事件「ペルージャ英国人女子留学生殺害事件(アマンダ・ノックス事件)」を、イギリスの名匠マイケル・ウィンターボトム監督が映画化した本作。出演はダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセイル、カーラ・デルヴィーニュら。
イタリア・シエナで発生したこの事件は、容疑者と被害者がともに若く美人だったため報道が過熱。セックスやドラッグが絡んだ事件の背景が誇張して伝えられていた。この事件の映画化をオファーされた気鋭の監督トーマスは、「事件」の真偽が不確かな状況の中、創作上の迷いに苦しむが、シエナで出会った天真爛漫な女子学生メラニーの励ましに心癒やされ、“本当に撮るべきもの”に気付き始めていく……。
この作品について「誠実な映画だなと思いました。物語以上の何かをつかもうとしていて」と語るのは松江氏。「事件そのものは意外とうすっぺらいものなので、そのまんまミステリーとして描けるわけではない。そこで自分がどういう気持ちでシナリオを書いたかということを入れたり、登場人物に架空の少女を付け足したり、そういう現実と虚構を織り交ぜるやり方をとるのは、物語以上の何かを表現したいときに使う。そういう映画作りは惹かれますね」とその魅力を話した。
イベントで事件の経緯についても丁寧に解説した柳下氏は、「実際の事件に基づいた内容ということもあるんですが、それ以上に現実の断面を見せつける。表面的な出来事の中にどこか裂け目があって、その裏には恐ろしいことがあるらしいということがよく伝わってきます」と語った。
また柳下氏は、映画が「(事件の犠牲者の)メレディス・カーチャーに捧ぐ」という言葉で終わることが特に印象に残ったという。「容疑者のことはみんな覚えているけど、犠牲者のことは忘れられがち。犠牲者に注目させるところにウィンターボトムの倫理性みたいなものを感じ取れました」とアピールした。