ユニークな世界観で話題『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』前原滉&矢部太郎&片桐はいりが明かす“抑えた芝居”の裏側
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◆ワンアイデアでは終わらない“飽きない”面白さ
――完成した映画を観てどういった感想を持たれましたか。
矢部:僕は現場でも見ていて面白かったんです。受付での今野さんのシーンとか。本編を観たら鉛筆が転がってるカットとか、現場で見ていたもの以外が入るとまたさらに面白いんですよね。
前原:僕は新しいと思いました。それが好きか嫌いか、は分かれると思いますけど、僕は好きだったんです。皆さんが抑えていらっしゃるから、想像できるところがあって面白かった。その解釈の広さが良さなんじゃないか、と個人的に思いました。
映画『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』より (C)2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト
片桐:まず、びっくりしましたね。ワンアイデアっていう印象になりそうなのに、どんどん面白くなる、飽きない。それに作りこまれていて、前原さんが演じる露木のキャラクターに芯があって、そこに吸収されていく。ちゃんと感情が揺さぶられる。登場人物があまり感情を見せない分、観てるほうが悲しくなったり寂しくなったり、「矢部さんかわいそう」とかいろいろ思う部分が多いのが面白かった。川の向こう岸に対して、勝手に色んな思いが沸きますよね。「こんな問題があります!」と見せられたら、それしか考えないけど、勝手に妄想できるから、気持ちが揺さぶられるのかな。
前原:押しつけがないから想像できるんでしょうね。
片桐:最後のトランペットのシーンとか、なんだか悲しくなって泣きそうになっちゃった。矢部さんのシーンも笑えるんだけど、可哀そうな演技じゃないんだけど可哀そうになったり。そういうところが面白かった。押し付けられないから自由に楽しめたのかな。
◆世の中あらゆるところに不条理がある———いつ観ても「今」を感じさせる物語
――どこの時代とも場所とも設定されていないけど、現代社会を彷彿させます。
矢部:やっぱり想像させられるから、時代に囚われないのかな、と思います。今観ると現代みたいだし、もうちょっと経って観てもやっぱり「今みたいだな」と思っちゃうんでしょうね。
前原:戦争だけでなく、誰かを攻撃することって時代が違っても同じで、なぜ誰かを攻撃するんだろう、いまならなぜSNSで誰かを中傷するのか、とかどの時代のどういう場面にも通じるから、現代社会にも繋がるんだと思います。
映画『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』より (C)2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト
片桐:ちょっと古めのほっとするような世界観なんだけど、ちょっとしたことが今の自分の思ってることにマッチする、気づきがあるんだと思う。笑いとして見せてるけど、「実は私もまさにそういう風に思ってましたよ」ってことが結構あるのかも。
前原:多いですよね。男女のこと、会社の形、上司と部下の形とか…。
矢部:町長の感じとか…。
片桐:いまコロナ禍だから決まったことを決まったようにしかできないでしょう。「パンを4つに切って」とお願いしたら「2つにしかお切りできません!」とか(笑)世の中あらゆるところに不条理がある。映画ではコメディとして描かれて笑って観てるけど、これっていま起きてることだな、と思ったり。