異彩を放つ新旧【鳥映画】4選
街中の鳩や雀など、日常において最も身近な野生動物である“鳥”。古来より神話や伝承では「自由の象徴」や「神の使い」として尊ばれてきたが、映画の世界においても、時に観る者の恐怖を呼び覚ます存在として、時に再生や狂気を映し出すメタファーとして、幾度となくスクリーンに登場してきた。この3月、奇しくも“クロウ”をモチーフとした話題作が立て続けにスクリーンに登場する。3月6日より公開中の、復讐の化身が漆黒の夜を舞う最新リブート作『ザ・クロウ』。そして3月27日には、ベネディクト・カンバーバッチが主演・プロデューサーを務める注目のファンタジー・スリラー『フェザーズ その家に巣食うもの』の公開が控えている。今回は、これら最新作を含む、“鳥”の存在が異彩を放つ4作品を紹介する。
【動画】静かに忍び寄る不穏な気配――『フェザーズ その家に巣食うもの』特報
『鳥』(1963) 理由なき襲撃の恐怖
映画『鳥』(1963) 写真提供:AFLO
サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックが、日常の象徴である“鳥”を未知の脅威へと変貌させたパニック映画の金字塔。のどかな港町ボデガ・ベイで、カモメやカラスが突如として凶暴化し、人々に牙をむく。空を黒く塗りつぶす鳥の群れ、ジャングルジムを静かに占拠するおびただしい数のカラス……その異様な光景は、観る者の本能的な戦慄を呼び覚ます。
屋外のみならず、家の中まで侵食し、逃げ場のない人々を執拗に追い詰める鳥たち。極限状態の人間模様を冷徹に描きながらも、なぜ彼らが襲いくるのか、その理由は最後まで一切明かされない。この不条理な恐怖こそが、公開から半世紀以上を経た今もなお、色あせることなく私たちの心を掴んで離さない理由だ。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014) それは狂気か、自己の投影か
映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014) 写真提供:AFLO
かつて鳥をモチーフにしたヒーロー「バードマン」を演じ、世界的な人気を博した俳優が、再起をかけてブロードウェイの舞台に挑む。しかし、輝かしい栄光はすでに過去の物。世間からの冷ややかな視線、共演者の才能への劣等感、崩壊寸前の家族関係――。
四面楚歌のなかで精神を摩耗させる彼の前に、かつて自身が演じたバードマンの幻影が現れ、呪いのように耳元で嘲笑を囁き続ける。全編ワンカット風の斬新なカメラワークと、現実と虚構が混濁していく演出が、逃げ場のない彼の焦燥を剥き出しにする。観る者をその精神の深淵へと引きずり込んでいくような、狂気と再生の人間ドラマ。
『ザ・クロウ』(公開中) 死の淵から舞い戻った、漆黒の復讐者
映画『ザ・クロウ』場面写真 (C) 2024 Yellow Flower LLC
1994年の伝説的カルト作を、現代的解釈で再構築した復讐劇。愛する婚約者と共に無残に殺害されたエリックは、死の国の使者である一羽のクロウに導かれ、復讐の化身として現世に蘇る。超人的な治癒能力を授かった彼は、漆黒の装束に身を包み、自らの命を奪った悪党たちを闇夜の中で一人ずつ追い詰めていく。
スタイリッシュかつ生々しいバイオレンス描写が、死の淵から舞い戻った男の執念を冷徹に描き出す。一途な愛が血塗られた惨劇へと変貌していく、容赦なき復讐劇。
『フェザーズ その家に巣食うもの』(3月27日公開) 現実と幻想の境界を揺さぶるファンタジースリラー
映画『フェザーズ その家に巣食うもの』より (C)THE THING WITH FEATHERS LTD/THE BRITISH FILM INSTITUTE/CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2025 ALL RIGHTS RESERVED.
最愛の妻を亡くし、慣れない子育てに奮闘するコミック・アーティストの父。深い喪失感と孤独に苛まれ、やがて精神が崩壊寸前へと追い詰められていく彼の前に現れたのは、禍々しいビジュアルを湛えた巨大な“クロウ”。父の狂気に呼応するように現れたその姿は、奇しくも彼が自ら描くイラストのクロウと酷似している。
失意の彼を嘲るように、そして時には寄り添うように付きまとうその存在がもたらすのは、果たして破滅か、それとも再生か。現実と幻想の境界を激しく揺さぶるファンタジースリラーが幕を開ける。主演のベネディクト・カンバーバッチが、これまでのヒーローや天才像をかなぐり捨て、剥き出しの怪演で体現した「生身の父親像」にも注目だ。
今回『フェザーズ その家に巣食うもの』の新場面写真2点が解禁。ベッドに止まる一羽のカラス、そして漆黒の闇の中で不気味に佇む“クロウ”。最愛の妻を亡くした父の前に現れたこの奇妙な存在が、失意の家族に何をもたらすのか――。

