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『犬鳴村』が14億円超ヒット! 『事故物件 恐い間取り』にも注目 Jホラーの現在地とは

映画

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●「家系ホラー」の傑作『残穢』と『呪怨:呪いの家』の衝撃

 さて、若者に寄せた作品が増殖するなか、頑固な古参ファンを喜ばせているのが、ネットに氾濫する恐い話とは流通経路が違う、旧メディアの怪談を扱った作品だ。5億円突破のヒットとなった『残穢【ざんえ】 ‐住んではいけない部屋‐』(2015)は雑誌の読者投稿、Netflix配信のドラマシリーズ『呪怨:呪いの家』(2020)はテレビの心霊番組から物語が始まる。

 『残穢』の監督は「おわかりいただけただろうか…」のフレーズでおなじみ、『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズの巨匠・中村義洋。無人の部屋で聞こえる畳をホウキで掃くような怪音に端を発し、そこに住む者を非業の死に追い込む死の穢れの謎を追って幾重にも重なる恐怖の源泉が紐解かれる。

 『呪怨:呪いの家』ではJホラー孤高の鬼才・高橋洋と一瀬隆重プロデューサーの脚本を得て、『きみの鳥はうたえる』(2018)の三宅唱監督がホラーに初挑戦。怪談収集をライフワークとする心霊研究家(荒川良々が飄々と妙演!)を軸に、猟奇犯罪と怪奇現象を両輪にして『呪怨』の世界観を刷新。昭和の終わりから平成にかけて発生した「女子高生コンクリート詰め殺人」や「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人」、「オウム真理教のサリン事件」と、異常な凶悪犯罪を句読点に用いつつ、Jホラーの胎動期となった時代の暗く殺伐とした空気のなかに、呪いの家に囚われた人々に伝播する死の波紋を浮かび上がらせた。

 どちらもホラーならではの心地よい湿り気のある心霊描写をふんだんに盛り込みながら、怪異の現場を足で取材し、恐怖の体験者に直接話を聞く、昔気質の隙のない語り口が光る。デマや誤情報も多い有名無実のネット怪談とは一味違う「本当に怖い作品」として、百戦錬磨の怪談ジャンキーや目の肥えたJホラー愛好家を唸らせた。


●実は「コワすぎ」てもヒットは難しい? 

 しかし、最近は「怖すぎる」ということがネガティブな面にもなってしまう。『残穢』のせいで「自室がコワくなった」なんて苦情はカワイイものだが、『呪怨:呪いの家』の陰惨な暴力描写には拒否反応もでた。『犬鳴村』と同時期にヒットしたアリ・アスター監督の『ミッドサマー』(2019)では、SNSに観る前のユーザーから「コワいですか?」との投稿が相次いだ。リアルタイムに情報が拡散されるSNS時代ならではの現象といえるだろうか。これは単に恐怖度の問題ではなく、自分が「不快」にならないか?という問いのように思える。1990年代、「人間が怖い」サイコスリラーの全盛を経て、多くの21世紀ホラーが観客のメンタリティを攻撃する内容に変化したことで、動物や弱者に対する虐待、女性への性的暴行など、現代社会で特に忌み嫌われるタブーをどう描くかがデリケートな問題になってきた。

 また、大規模災害やコロナ禍など、現実の脅威が日常に存在する今、感受性の強い若年層向けのホラー映画を作るには細心の注意が必要だ。コワいものが苦手な人に、嬉々としてそれを勧める行為が「ホラハラ(ホラーハラスメント)」と称されるような時代。映像表現にも意識改革と「それでも恐怖を描く」信念が求められている。

●あらたなエンタメホラーを目指す『事故物件 恐い間取り』

 そこで登場するのが、28日より公開された『事故物件 恐い間取り』(2020)である。事故物件とは自殺や殺人、火災による死亡事故等の現場となり、心理的瑕疵のあるいわくつき物件のこと。いわば居住可能な心霊スポットに「住んでみた」芸人・松原タニシのノンフィクション体験談本が原作だ。事故物件を検索可能なサイト「大島てる」の影響もあり、『犬鳴村』と並んでネットでの認知度は十分。『残穢』や『呪怨:呪いの家』と同様、不動の人気を誇る「家系ホラー」の進化系であり、監督はJホラーの第一人者、中田秀夫。最近のトレンドを踏まえれば死角なし。令和Jホラーの必見物件であることは間違いない。

 中田監督は『ザ・リング2』(2005)でハリウッドに進出。恐怖を積極的に楽しむアメリカの観客に驚き、ハロウィン・イベントの浸透で、日本でも恐怖に対する価値観が変わってきた現状を念頭に置き、今回は特に若い観客に向けた「怖くて面白い」エンタメホラーを目指したという。

 4つの事故物件を渡り歩きながら、恐怖を生活の糧にすることで、徐々に負の因縁を背負う主人公ヤマメ(亀梨和也)。彼を心配するヘアメイク見習い(奈緒)との淡い恋や、元相方(瀬戸康史)との友情も物語の大きな柱だが、事故物件に巣食う怪異の正体と真正面から対決するクライマックスに、中田監督の揺るがぬ強い決意を見る。

 ここにきて日本のホラー映画には大きな動きが生まれた。ジャンルとしての着地点はまだ見えないが、作り手と観客、双方を巻き込んだその行方には大いに注目したい。(文・山崎圭司)

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