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“泣けるのに笑える”人生の妙味が詰まった『コントが始まる』の巧妙さ

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 さらに、第一話を観た時点では、春斗と潤平の「相棒」感に比べて、若干距離がありそうに見えた瞬太の心情が第二話に明らかになる。

 「ぷよぷよ」日本一になった瞬太は、実は10年前、春斗にお笑いの道に誘われ、「相方、お前しか考えらんないわ」と言われた潤平のことが、心底うらやましかった。そこから5年後、二人の前で「若い子に歯が立たなくなった」とこぼし、プロゲーマーを引退すると宣言したことで、春斗はマクベスに瞬太を誘うが、実は大会では大差で優勝していて、にもかかわらず「むなしかった」。だから、お酒の力を借りてでもマクベスに入れてほしいと懇願するつもりだったのだ。

 それは「優勝しても孤独なゲームの世界より、連敗続きで光が見えないと嘆く二人のステージのほうが輝いて見えた」(モノローグ)からだ。

 また、マクベス結成のときと解散を決めるとき、「大事な発言をするとき、いつもラーメン食い終わった後」という春斗のクセも、奈津美に告白するとき、コントの設定を借りてアドリブで春斗に謝罪するとき、「気合の入った場面でいつでもアキレス腱をのばす」潤平のクセも、笑いと涙で回収される。

 さらに、春斗・潤平の二人と、瞬太が仲良くなったきっかけが、瞬太がひそかに屋上から死のうと考えていたときに春斗に声をかけられたことだったことも、コント「屋上」とリンクして明らかになるのだ。

 互いの行動パターンやクセは嫌というほど理解し合っているのに、肝心なことは言葉で伝えられない不器用な3人。そして、そんなすれ違いを引き留め、つなぎ合わせるのが、彼らを「推し」として見守り続け、過去のインタビューや別名義で密かに書いていたブログなどもくまなくチェックするファン・里穂子だ。

 そんな里穂子は、自身を「たぶん疫病神」という。好きになった雑誌が廃刊、アパレルメーカーは倒産、入った会社も株価が暴落したのに、自分が辞めてから右肩上がり。応援するマクベスも、自分が初めてライブに来たら解散。好きになったり接触したりすると不幸なことが起こるというのが彼女の持論である。しかし、里穂子が一方的に見守ってきたはずのマクベスに、実はネタを提供していたように、「10年間」のさまざまな地点が、反対側から見ると全く別の意味を持ち始める。

 そう思うと、「疫病神」の里穂子はマクベスにとって幸運の女神であり、「解散宣言」はきっと「始まりの場所」なのではないか。彼らの始まったばかりの物語の先が、気になって仕方ない。(文:田幸和歌子)

<田幸和歌子>
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムをさまざまな媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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