かたせ梨乃、五社英雄監督との出会いが転機「『極道の妻たち』が私を女優にしてくれた」
かたせは、大学在学中にモデルとしてデビューし、女優に転身。儚さやたくましさなど、人間の情念までを表現できる女優として、映画・ドラマなど活躍の場を広げてきた。女優業の転機としてあげたのは、女性側の視点から極道の世界を描いた人気シリーズの1作目で、五社英雄監督がメガホンを取った『極道の妻たち』だ。
かたせは「職業欄に“女優”と書けるようになったのは、『極道の妻たち』の1作目に出会ってから。それまでは“タレントさん”という感じで、『極道の妻たち』から女優としての人生がスタートしたと思っています。当時29歳でしたから、女優を始めたと言える年齢が遅いんです」と明かす。同作での演技が話題となり、その後も『極妻』シリーズに立て続けに出演した。かたせは「1作目で岩下志麻さん、2作目で十朱幸代さん、3作目で三田佳子さんという、日本を代表する3人の女優さんとお仕事をさせていただいたことが、私にとっての財産になりました。それぞれ違う魅力を持っていて、本当にすばらしい女優さん。他にも『極妻』シリーズには、成田三樹夫さん、大坂志郎さん、藤間紫さんと存在感のあるすごい役者さんがたくさん出ていらっしゃいました」としみじみ。
同シリーズでは、男社会に翻弄されながら“闘う女”を演じていたかたせだが、「当初、私にはそういったイメージはなかったと思います。自分自身のキャラクターでもありませんし(笑)。でもシリーズを重ねながら、“この役柄に近づきたい”と一生懸命に立ち向かっていくうちに、次第に“ああいう役をやらせたら、他にできる人はいない”と感じていただけるようになったのがとてもうれしくて。決して1日ではできないもので、何十年もの月日を経て、“闘う女”としてのキャラクターが生まれていったんです」とがむしゃらにぶつかりながら、当たり役を生み出したという。
また五社英雄監督との出会いも「女優人生においてとても大切なもの」と心を込め、「五社さんとは“5本、一緒に仕事をしようね”と話していました。でも五社さんは60代で亡くなってしまって、4本しかご一緒できなくて…。とても残念でした」と振り返り、五社監督とタッグを組んだ『吉原炎上』、『肉体の門』、『陽炎』にも思いを馳せる。
かたせは「『吉原炎上』では、ラストの吉原が燃え上がるシーンを撮るためには、大量のお水がないといけないということで、琵琶湖のほとりに吉原のセットを建てているんです。あの大きなセットを燃やしちゃうんですから、今では絶対にできない撮影ですよね。それぞれの女性の生き様が描かれていて、ああいう女性の生き方もあったんだということを知ることができるような映画。様式美もすばらしいですよね」と魅力をかみ締める。
「『肉体の門』では、五社さんが本物の牛をさばこうとしちゃって、大騒ぎになったことがありました。“本物でやりたい”という監督を、スタッフが“そんなことをしたら女優さんが失神しちゃいますよ!”と止めたりして。信じられないことするよね!」と笑顔。