諏訪部順一が語る『トロン:アレス』 AIが身近になった“今”だからこその面白さとは?
世界で初めてCG(コンピュータ・グラフィックス)を映画に本格導入した映画『トロン』(1982)から約43年。技術が発展し、AIが生活の一部となった今、シリーズ3作目となる『トロン:アレス』が公開中だ。過去2作品では、現実世界の人間がデジタル世界に足を踏み入れてきたが、今回描かれるのは、高度なAIプログラムがわれわれの世界にやってくるという最先端の世界。主人公はジャレッド・レトが演じるAI兵士のアレスで、現実世界や人間に触れることで、何度倒れても再生する“使い捨て”の存在であることに少しずつ疑問を持ち始める。そんなアレスの日本版声優を務めるのは、『僕のヒーローアカデミア』相澤消太役や『呪術廻戦』両面宿儺役などで知られる諏訪部順一。小学生の頃に1作目の『トロン』を劇場で鑑賞し感銘を受けたという諏訪部に、シリーズやライトサイクルの魅力などを聞いた。
【写真】諏訪部順一が日本版声優を務めた『トロン:アレス』アレス(ジャレッド・レト)
■『トロン』は「とんでもなくクールなもの」だった
世界で初めてCGを映画に本格導入し、世界中の観客のみならず、ジェームズ・キャメロンや、ジョージ・ルーカス、ピーター・ジャクソン、ティム・バートン、ウォシャウスキー兄弟など名だたる映画監督に影響を与えてきた『トロン』。
諏訪部も本作に魅了された一人で、「小さい頃から、いわゆる『ハイテク』なものに興味がありまして。当時の最先端技術であるコンピュータグラフィックスを駆使した『トロン』の映像は、私の目に『とんでもなくクールなもの』として映りました。擬人化されたプログラムたちが、コンピューターの中で社会を構築しているという設定も斬新でしたね」と鑑賞当時の衝撃を振り返る。
映画のみならずビデオゲーム、コミック、アニメシリーズとさまざまな形で展開されてきた本シリーズだが、2016年には、2作目となる『トロン:レガシー』(2010)をテーマとしたアトラクション「トロン・ライトサイクル・パワーラン」が上海ディズニーランドに誕生。2023年には米マジック・キングダムに「トロン・ライトサイクル・ラン」として登場し、現実世界のわれわれがライトサイクルに乗り込んで「グリッド」の世界を体験できるようになった。
映画『トロン:アレス』場面写真 (C)2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
本シリーズのアイコンの1つでもあるライトサイクルは、『トロン:アレス』で赤色になって登場。そんなライトサイクルについてバイク好きの諏訪部に魅力を聞くと、「とてつもなく高い走行性能を持ちながら、普通の人間でも運転可能なところが凄いですね。運転者の能力を補う高度な自己制御機能が、あのライトサイクルには備わっているのでしょう」とバイク愛あふれる答えが返ってきた。
また、『トロン:アレス』の中で印象に残ったシーンについては「予告編に登場する映像だけでもシビレますね。ライトサイクルが現実世界を駆け抜けるシーンは特にたまりません。デジタルの権化みたいな作品ですが、シリーズを重ねるごと、バトルシーンにおけるアナログ的な『格闘アクション』のレベルも上がっているのが面白いです」とコメント。
そんな諏訪部は日常生活におけるAI活用について、「企画を考えたり、デザインをしたりするような仕事もしているので、AIは日常的に利用しています。しかし、安易に頼るべきではないという認識です。ファクトチェックや権利侵害をしないための配慮は必要ですし、任せきりは自身の思考力や創造力の低下に繋がると思いますので」と慎重な姿勢を見せている。
『トロン』では、ウォルター・ギブス博士が「コンピューターは思考できない」「思考できるようになると人間は考えなくなる」と言うシーンがあるが、生成AIが普及しつつある今、博士の指摘したような世界は近い将来まで迫っているのかもしれない。
40年以上の時間をかけて、映像面でもストーリー面でも進化をし続けてきた『トロン』シリーズ。最後に、2025年の今だからこそ感じられる『トロン:アレス』の面白さについて、諏訪部は以下のように語った。
「ビジネスの世界では、AIを取り入れ活用することはもはや既定路線となりました。中には、日常の話し相手にAIを利用されている方もおられるようで。ネットワークの中にしか存在しないプログラムたちとの対面コミュニケーションや、質量を持って彼らが現実世界に現れる……そんな状況に対して、80年代よりもリアリティを感じられるようになっているのが面白いですね」
映画『トロン:アレス』は現在公開中。

