阿部寛、ローマ人から便利屋に!役作りに一苦労「すごく筋肉が残って…」
特に難しく、印象に残っていると明かすのは、終盤に訪れる、吉永と阿部、ふたりきりのシーン。この7分ほどの大事なシーンを、成島監督はテストなしの長回しで撮影した。
「もちろん事前に脚本は読んでいます。でも、この長ゼリフを、吉永さんがどういう気持ちで言うのか、全く想像できなかったんです。実際に、吉永さんの口から悦子の気持ちを聞いたとき、『こういう気持ちだったのか!』と、自然と浩司の気持ちになって涙が出ました。改めて人が演じることの説得力というか、吉永さんのすごさを感じましたし、テストをしないという成島監督の作戦が、僕にとっても有難かった。あの芝居を2度やるのは無理だと思います」。事実、観客の心を掴んで離さない、とても緊迫した力強いシーンに仕上がった。
お騒がせ役とあって、浩司は本編の笑える箇所も多く担っている。中でもプロレス興行でレスラーが足りなくなり、便利屋を営む浩司が助っ人をするシーンが可笑しい。ここで阿部は見事な肉体を披露! と思いきや、大胸筋の線をマジックで書いて登場する。
「実はすごく筋肉が残っちゃってたんです。『テルマエ・ロマエII』の。便利屋なのに妙に美しい筋肉が付いちゃってた(笑)。このままだとおかしいから、上から線を書いて、監督に『やりすぎですかね』って見せてみたんです。そしたら『これで、やりましょう』って。僕としては、大丈夫かなって思いもあったんだけど、監督が『浩司らしいから、このままで』って(笑)」。筋肉を隠すための線だったとは、阿部ならではの裏話だ。(取材・文・写真:望月ふみ)
『ふしぎな岬の物語』は10月11日より全国ロードショー。