前田敦子、独自のスタンス「制限を設けてしまうことは、人生の損」

2012年8月、AKB48卒業以降、個性的かつ魅力的な映画監督の元、意欲的な作品に出演し続けている女優・前田敦子。最新作『素敵なダイナマイトスキャンダル』でも、実母がダイナマイト心中を図ったという体験を持つ伝説の雑誌編集者・末井昭の妻・牧子を、1960~80年代という時代にフィットした佇まいで好演している。
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AKB48在籍時、最後の映画出演となった『苦役列車』(2012)をはじめ、『さよなら歌舞伎町』(2015)、『武曲 MUKOKU』(2017)、そして本作など、スクリーンから“匂い立つような生々しさ”を描いた作品への出演が多い前田。自身も「私は青春映画をほとんど通らなかったなという自覚はあります。現役で(アイドルを)やっていたころは、タイミングが合わなかったんでしょうね」と苦笑いを浮かべる。
「タイミングが合わない」という言葉が前田のスタンスを物語っている。「私は自分で『こういうことはやりたくない』と制限を設けてしまうことは、人生の損だと思っています。声をかけていただけるだけでうれしいので、ご縁と運、タイミングは大切にしています」。
こうした前田のスタンスは、AKB48をプロデュースしていた秋元康の影響も大きかったという。「秋元さんは名言が多いのですが、私は何度も『敷かれたレールに乗っかっていくことを怖がってはいけない』と言われていたんです。その言葉は私にとって大きくて、どんなことに対しても『私はこうなんです。こうしたいんです』という凝り固まった考えは持たないようにしています」。
AKB48卒業後、なすがままに進んでいった前田の女優人生。大きな分岐点となった作品は山下敦弘監督の『苦役列車』だという。「『苦役列車』が公開された時点では、まだAKB48にいたのですが、女優さんとしてやっていきたいと思った大きなきっかけになった作品です。この作品の打ち上げで『もらとりあむタマ子』のお話もいただけて…。山下監督が、何も知らない私を、こんなに素敵な映画の世界に引っ張っていってくれたんです」。
前述したとおり、その後、前田は、山下監督をはじめ、廣木隆一監督、沖田修一監督、熊切和嘉監督、黒沢清監督ら、映画ファンから非常に高い評価を受けている監督作品への出演が続いている。「本当にありがたいです。AKB48を卒業してから、面白い映画監督さんが手招きをしてくれて、そっちの世界に飛び込んでいけたのは、私にとって幸せなことでした」としみじみと振り返る。