怖いと話題! 『ミンナのウタ』清水崇監督に聞く怖い映画作りの裏側 幻の後日談もあった
本作で恐怖の源泉となるのが呪いの音源。「アーティストの映画なので、音を元凶に、小森くんがラジオ番組を持っていると知り、ラジオ局で古いカセットテープが見つかる導入部を考えた」と清水監督は明かす。その着想源は劇中にも登場する「かぐや姫」の解散コンサートの録音に紛れ込んだ「私にも聞かせて」という謎の声。急逝した若い女性ファンの無念の声と噂された、昭和を代表する芸能怪談だ。監督も学生の頃にテレビの心霊番組で聞き、悲しげな声が強く記憶に残ったという。
始まりのカセットテープ (C)2023「ミンナのウタ」製作委員会
そんな謎の声から誕生した“さな”は、「ウタ」で自分の世界に人を「惹き込む」ことを夢見る少女。当初は高校生の設定だったが、もう少し幼く、心身の成長も含めて不安定で、強い衝動に身を委ねる危うさを秘めた中学生に変更された。また、物語上の効果を考えて謎の声をメロディに置き変え、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)の冒頭に流れるハミングをイメージして「ウタ」が作られた。「これがまた難しくて。ラン、ランラララン~なんて歌ううちに、『風の谷のナウシカ』(1984)になっちゃたりね」と監督。
耳で覚えたフレーズが頭から離れなくなる。誰にでもある経験が次第に「ウタ」の呪いとして実体を成す。首筋を掻く音、しゃっくりや貧乏ゆすりのリズム。無意識の仕草、声や雑音が紡がれ、意味を持ってくる描写がこれまたジワリとコワい。