鹿賀丈史、俳優業は“生きがい” キャリア53年の今も若い世代から刺激受け自身をアップデート
53年という俳優人生は、幸運な出会いの連続だったと鹿賀は振り返る。劇団四季での鮮烈なデビュー、そして映像の世界への扉を開けてくれた松田優作との出会い。それは、彼のキャリアを語る上で欠かすことのできない大きな転機だった。
「出発が劇団四季で、『ジーザス・クライスト=スーパースター』という素晴らしい作品で主演デビューさせてもらいました。22の時でしたけれど、本当にラッキーな出発でした。そこから初の映画作品となった『野獣死すべし』で松田優作さんと出会って。僕は劇団育ち、優作さんはテレビ・映画育ち。彼はもう大スターでしたけど、すごく優しくて面白かった。どうしても一緒にいると優作さんの芝居に引っ張られてしまうことがありました。そんなとき『おい鹿賀、それちょっとやめたほうがいいぞ』なんてフランクに言ってくれる人でした」。
劇団四季との出会い、映画との出会い、そして37歳で『レ・ミゼラブル』というまた大きなミュージカルとの出会い。「これだけいろんな作品に恵まれてきた俳優も、そんなにはいないのかもしれないなと思います。そして今回ショートフィルムでしたが、とても内容の詰まった作品に出演できました。こんなラッキーでツキのある俳優はいないですよね」と笑う。
舞台で培った表現力と、映像で求められるリアリティ。その違いに戸惑うことはなかったのか――。しかし鹿賀は「同じものだと思っています」と断言する。
「劇団の時も、舞台だからって特に大きな声を出すとか、そういうことよりもリアリティのある芝居を……と思っていましたから。映像の現場に行って違う芝居とはあまり思わなかったですね。ただ、映像の方がスクリーンを通して、より奥深いものになる。自分が演じているその奥まで見られるということは感じます」。
その根底には、演じることへの純粋な喜びがある。「役について『こうやろう』なんて考えている時間が一番楽しいんです。稽古で俳優同士が『こうでもない、ああでもない』とものを作り上げていくプロセスが面白い」。半世紀を経てもなお、その探求心は尽きることがない。