『フォールアウト』ルーシー&ハンク親子 「トイレが大変だった」過酷な撮影裏を語る
関連 :
ゲームの世界を忠実に再現すべく、複数の大陸でロケが実施された本作。ニューヨークのスタジオに設けられた冷たいVaultのセットから、息をのむようなナミビアの海岸線まで、ロケーションは多岐にわたる。
そんな中でエラが苦労したというのが「トイレ問題」。「笑えないくらいトイレが遠かったんです(笑)。砂漠用のゴルフバギーみたいな乗り物に10分くらい乗らないとたどり着かなくて。もう完全にちょっとした旅なんですよね。最終的には、撮影中に水をたくさん飲むのはやめておこうとなってしまいました」と笑う。
カイル・マクラクラン演じるハンク 『フォールアウト』シーズン2 場面写真 (C)Amazon MGM Studios
また、カイルもパワーアーマーを着用しての撮影に一苦労。「パワーアーマーは上半身と下半身に分かれていて、全身のカットはわたしではなく、体力がある屈強なスタント・パフォーマーが撮影しています。わたしが映るカットになると、上から少し角度を着けて撮っているのが分かると思います。わたしは上半身だけ着用していました」
「ストラップやボルトで固定するので、指一本入る隙間もありません。でも腕だけは動かせます。でも肩より上には上がらないんです。すごく重くて、背中のあたりに負荷がかかるので、猫背のような姿勢になってしまいます。数時間もすると、イスに座らずにはいられなくなるので、すごく背の高い専用のイスを作っていただいていました」
すると「パワーアーマーの胸元に段になっているところがあって、カイルがそこにコーヒーを置いていたんです」とエラが笑いながら暴露。「コーヒーはストローがあるから一人で飲めるんですけど、食べ物は食べられないから、サンドイッチは人に食べさせてもらいました(笑)」とカイルは照れたように笑う。
これだけ撮影が大変だったのは、制作チームが“本物”にこだわっていたから。「VFXを用いる前に、可能な限り実物を使ってロケ地で撮影したい」とジョナサンが語っていたように、本作の撮影ではセットや衣装、小物に至るまで細部にまでこだわりが光っている。
ルーシーたちを襲うクリーチャーたちも同様で、ヤオ・グアイは頭に発泡ゴムをかぶったスタントマンが演じており、ガルパーは実物大のパペットを用いて撮影され、その後VFXが重ねられた。
こうした撮影方法は、視線の位置を調整できたりと俳優たちの芝居の手助けになる。クリーチャーデザインが魅力のデヴィッド・リンチ版『デューン/砂の惑星』に出演していたカイルは、実物があると演技のスケールを合わせられるので「すごく助けになる」と称賛。
「『ミステリアス・アイランド』という作品に出て、あまり出来は良くなかったのですが(笑)、その作品は怪物たちがすべてCGで描かれていました。見えないものに対して芝居をしなければいけない時、俳優たちは自分は何を見ているかを想像しながら、感情やリアクションを調整しなければいけません。すると自分の芝居がオーバーなのか、足りていないのか常に疑問が生まれるんです。必ずしも、監督やVFX担当の人が説明する通りに作品ができるとは限らないからです」
「『デューン/砂の惑星』のサンドワームとの撮影では、実際に反応できるものが用意されていました。正直あの時は抑えすぎてしまって、『もっとできたな』と今でも思いますが(笑)」
エラ・パーネル演じるルーシー 『フォールアウト』シーズン2 場面写真 (C)Amazon MGM Studios
俳優と制作陣が連携し、妥協のしない撮影方法をかなえたからこそ、ファンを満足させるのみならず、ゲームをしたことがない人をも引き込むクオリティーとなった『フォールアウト』シリーズ。その人気の理由をエラはこう分析する。
「レトロフューチャーなゲームのトーンが本当に好きで、この雰囲気が人々を魅了したんだと思います。あと1950年代っぽい美学や、笑いどころがありつつも、胸に来る瞬間もあるところも魅力ですよね。でも成功のレシピなんて存在しないと思うんです。もしあったとしたら、みんなが傑作ばかりを作れているはずだからです。『フォールアウト』は奇跡的にいろんな要素がハマった作品であると同時に、もともとゲームがやろうとしていたことをきちんと受け継いで形にしています。その結果が、人気につながっているんだと思います」(取材・文:阿部桜子)
ドラマシリーズ『フォールアウト』は、毎週水曜日に1話ずつPrime Videoで配信(全8話)。

