ヒュー・ジャックマン、17年の歴史に幕 『X‐MEN』への愛と別れ
とはいえ、本作でもローガンのヒーロー然とした姿は少しずつ顔を出してゆく。ミュータントの最後の希望である、幼い少女ローラを守ることになったローガンは、少しずつローラと心を通わせる。劇中、ローラが夢中になる映画『シェーン』が、その先の二人を暗示するような憎い演出で胸を打つ。ヒューは言う。「『シェーン』では『殺人者の烙印は消えない』と語る場面が出てくるでしょう? 元々シェルターにいてほとんどしゃべらないローラが、あの映画を通して“道徳”というものに触れるんだ。ローガンが、もし同じ台詞を言おうものなら、彼らしくないというか、なんか少し甘くなってしまう。映画の中で言わせるというのは、とても賢いやり方だったと思うよ」と、神話的な映画の持つ力が現れている場面だから、お気に入りだという表情。
現在のアメコミブームの引き金となった『X‐MEN』シリーズの存在は偉大であり、主人公を長年演じ続けてきたヒューの功績にほかならない。17年の責務を終えたときの率直な気持ちを尋ねると、「感謝、疲れた(笑)、ハッピー…でもちょっと緊張感があったかな」とクランクアップの日の感情を一言、一言、じっくりと思い出してくれた。そして、「ベルリン国際映画祭で、完成した『LOGAN/ローガン』を観たときに、初めて『ああ…!』と安堵感が訪れたんだ。すごく私的な映画で、すごく期待値が高かった。けど、それを遥かに超えてくれた完成作だったから、本当に幸せだったよ」と、情熱的な笑顔を広げた。インタビュー中、何度も「ハッピー」という言葉を使ったヒューの渾身の思いが込められた集大成には、ウルヴァリン/ローガンに「ありがとう」と送りたくなるような、彼への愛が募ってやまない仕上がりになっている。(取材・文:赤山恭子)
映画『LOGAN/ローガン』は6月1日より全国公開。