市川團子・中村壱太郎・中村時蔵、スーパー歌舞伎『もののけ姫』を語る! 本番さながらの稽古の模様も
そして、この会見の直後には公開舞台稽古が行われた。
劇場内に入ると鳥たちの囀りが耳に入り、目の前にはたくさんの古木が描かれた幕が広がっている。まるで、仄暗く深い森の中に迷い込んだような気分だ。久石譲によるおなじみのテーマが流れ、かわいらしい“コダマ”が森の奥から姿を現すと、いよいよ物語が始まる。
土着的な民族舞踊で村人たちが盛り上がる中、“タタリ神”と化した猪が乱入してくる。そこはエミシの村。人々を助けるために猪を倒したアシタカ(團子)は、右腕に死に至る呪いを受けてしまう。その呪いを断つ道を探して、ヤックルに乗り“シシ神の森”を目指して西へ向かうアシタカは旅の途中、山犬に育てられた少女・サン(壱太郎)と出会う。山犬に襲われて崖下に落ち、大怪我をした村人を助けてタタラ場に連れてきたことで住民たちから歓迎されるアシタカ。ここでは女たちがタタラを踏み鉄を作っていて、牛飼いの男たちよりも立場が強い様子だ。そのタタラ場を率いるエボシ御前(時蔵)の話を聞くうち、彼らは山や森を破壊しシシ神の首をも取ろうとしていることがわかる。どうやら山犬のモロの一族はエボシを憎んでいるようで、その場にサンも現れてエボシと一騎打ちに。止めに入ったアシタカもやがて、この自然や神々と人間との壮大な争いの渦に飲み込まれていく……。
アナログではあるがリアルでしみじみと美しい幕などの背景画や舞台装置、音楽も原曲に近い洋楽器構成の演奏もあれば和楽器を使用してアレンジしたバージョンがあったりするのも面白く、歌舞伎ならではの表現や見せ場も満載。アシタカとシシ神を演じる團子の“早替り”があれば、花道を“六方”でサンが跳ねるように引っ込んでいき、やがてクライマックスにはシシ神による宙乗りも披露される。
團子による、強いヒーローでありながら繊細で優しい心を持つアシタカと、雅な神々しさを放つシシ神という二役の演じ分けも見事ながら、その凛とした立ち姿からはこのスーパー歌舞伎そのものと、並びに澤瀉屋一門、さらには歌舞伎界をも背負って立っていそうな覚悟と責任感が滲み出ていた。また壱太郎は獣であり人間の少女でもあるサンをパワフルに、かつかれんに演じていて新境地の輝き。エボシ御前を演じる時蔵のクールな美しさ、人間としての業の深さを感じさせる凄味にも唸らされ、気高く力強いモロの君(市川笑三郎)と迫力のある中に哀れさも感じさせる乙事主(市川中車)の対決の表現も見応えがあった。
さらにはジコ坊(市川猿弥)のコミカルな小悪党ぶりが軽やかで秀逸だったほか、甲六(市川青虎)、ヒイさま/トキ(市川笑也)、ゴンザ(市川門之助)らといった個性の強いキャラクターたちが登場するたび、その再現度の高さに驚かされる。また、その中で猩々の翁役で澤瀉屋一門の最長老、市川寿猿も元気に登場していて胸が熱くなった。
誰もが知る名台詞、名場面のポイントを押さえ見事な構成で繋いで魅せていた横内謙介の演出は流石と言うばかりで、数多く関わってきたスーパー歌舞伎への愛情も感じられ、約3時間30分の上演時間があっという間に感じた。『もののけ姫』という原作が持つメッセージ性もしっかりと表現されていて、特に物語が進んで行った終盤には、自然と人間は“共に生きる”ことは叶わないものなのか、憎しみの連鎖はどうしたら止めることができるのか、といろいろと思いを馳せること必至で名作の誕生を確信した。新橋演舞場での上演は8月23日まで、ぜひともお見逃しなきよう。
(取材・文 田中里津子)
スーパー歌舞伎『もののけ姫』は、東京・新橋演舞場にて7月3日~8月23日上演。
【公演概要】
スーパー歌舞伎『もののけ姫』
◆オリジナル音楽:久石譲
◆脚本:丹羽圭子、戸部和久
◆演出:横内謙介
◆出演
アシタカ/シシ神:市川團子
サン:中村壱太郎
エボシ御前:中村時蔵
ジコ坊:市川猿弥
モロの君:市川笑三郎
甲六:市川青虎
猩々:市川寿猿
ヒイさま/トキ:市川笑也
ゴンザ:市川門之助
乙事主:市川中車
※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記
◆日程・会場:7月3日~8月23日東京・新橋演舞場
【公式サイト】https://mononoke-kabuki.jp
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