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市川中車、歌舞伎になじみのない新宿での公演に並々ならぬ思い 大躍進続く息子・團子は「努力の賜物」

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市川團子

◆「歌舞伎はネタバレしたほうが面白い演劇」(團子)


市川中車
――復活上演から45年が経ちますが、今この作品を届ける意義をどう感じられていますか?

中車:歌舞伎の敷居というものを壊しつつ壊さないという線引きを父はずっと追い求めていたと思うんです。例えば、弥次さん喜多さんを出すことでストーリーを運ぶ人たちを入れるというのは、1981年の段階では勇気がいることだったと思いますが、歌舞伎というものは難解で敷居が高いと現代の人たちが足を運ぶことを止めているとするならば、その敷居を低くしようという努力を45年前にすでに父はしていた。今回声優さんが古典歌舞伎を語り演じる「こえかぶ」とのコラボレーションもありますが、そうした父が目指したものを検証する機会になるのではないかなと感じています。

いずれにしても、初めて観る人をどう開拓するかというのは歌舞伎の生命線であり、常に求められていることだと思うので、今回父が追い求めていたものを検証するという機会に恵まれたのは、澤瀉屋にとってはありがたいことだと思います。

團子:祖父は作品を創る時に「テンポ」というものを大切にしていました。いかにだれることなく、お客様に舞台を楽しんでいただくか。原作が、人間の因果関係を複雑に描く南北の作品ということもあり、祖父の初演の初日の上演時間は、なんと7時間程だったらしいのですが、再演のたびに改変が重ねられ、最終的には3時間45分程にまで短くなりました。現代は、YouTubeの動画などでも、どんどんコンテンツの時間が短くなっています。当時から「テンポアップ」の重要性を常に考えていた祖父は、時代の先を行くところがあったのだなと実感します。

祖父の初演から45年経った今、現代の大学生の世代の私が観ても本当に面白く、感動できるというのはすごいことだなと思います。祖父の作品の普遍性というものがどんどん確固たるものになっているなと感じています。

市川團子
――THEATER MILANO-Zaでの上演ということで、あまり歌舞伎になじみのないお客様も足を運ぶことになるのではないかと思いますが、そうした方にここを楽しんでもらいたいという点はどんなところでしょうか?

中車:やっぱり生の演奏と、マイクを使わない生の声、演者の迫力や“間”ですね。日本語の間というものがいかに気持ちいいものであるか、五・七・五で言うこと、歌舞伎の中での“情の間”というものを現代の人は100%感じずに生きているはずなんです。しかし、それを感じることは、呼吸法であったり、自分自身の肉体に何か響かせるきっかけになる可能性があると僕は思っているんですね。呼吸の間の大切さという日本人だけが持っているものが僕はあると思っていて、それは歌舞伎に色濃く残っている。むしろ歌舞伎にしか残っていないかもしれない。その間と生の音との調和を聴いてほしいと思います。

團子:歌舞伎を初めて観ていただく時に、どうしても映画やアニメと同じ感覚で予備知識なしでそのまま観ようとなると思います。けれどもし歌舞伎が難しい、よくわからないというイメージのあるお客様がいらっしゃったら、筋書を読んでいただいたり、イヤホンガイドを借りていただいたりして、是非お話の起承転結を知った上で歌舞伎を観ていただくということを体験していただきたいです。歌舞伎は実はネタバレをしても楽しむことができる演劇です。現代とは文化や価値観、話し方も違う時代のお話を、そのまま理解できる楽しさを感じて貰えると思いますし、背景を理解した上で歌舞伎のいろんな技法や見せ場を観ると面白さが段違いなんです。

中車:僕もそう思う。筋書を買ってほしいよね。だからギリギリじゃなくて30分前には劇場に来てほしいです。特にTHEATER MILANO-Zaみたいに歌舞伎町のど真ん中にあって、駅からネオンや看板がいっぱいの中を通って到着する劇場だと、歌舞伎の雰囲気に慣れるまでに時間がかかってなかなか没入できないかもしれない。上演までちょっとこうタイムスリップする時間を作った方がいいような気がします。

――より多くの人に歌舞伎に親しんでもらうという点でお二人はどのような思いをお持ちですか?

中車:これは本当に答えがないんですよね。まず多くの人に観ていただくには基本的に値段を下げるということしかないんです。ただ、歌舞伎はいろんなものをアナログでやっている演劇なので、そういったものを用意するのも大変お金がかかるのでなかなか難しい。でも今、「歌舞伎を観てみよう」というムーブメントがあるとするならば、今回の公演は新鮮にお客様を呼び込めるような気はしています。

なかなか僕の中では答えがわからないですけど、AIだったりいろいろデジタルなことを全部呑み込んで生きていくわけだから、その中でどうするか。むしろこの年代の人(團子)がそれを解決していかなきゃいけないなと思います。

團子:その人がどれだけ頑張ってその作品に臨んできたか、その姿勢が芸に出ると思っていて。それはアイドルでも、声優さんでも、現代劇の俳優さんでも、それこそ歌舞伎の舞台も全部一緒だと思うんです。例えばK-POPアイドルも、初めはその世界の知識がなくても、その人の頑張っている姿を見て魅力を感じたら自分で調べるようになり、さらに言葉を話せるくらいまでになるお客様もいらっしゃる。そういうのは歌舞伎で考えても一緒だと思っていて、とにかく自分がどれだけそのお役に懸けて一生懸命にやっているかというところを観ていただき、いいなと思っていただけたら歌舞伎をもっと知ってみようという気持ちが自然と湧くと思うんです。歌舞伎だから特別どうということではなく、やるべきことは実は一緒なんじゃないかなと思います。

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◆中車、大躍進の続く團子は「努力の賜物」

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