佐藤二朗、『爆弾』“喋りすぎる男”から“全く喋らない怪物”に 自身原作&主演の最新作から見える胸中とは
シリアスとコメディの間を縦横無尽に行き来するなど、佐藤の役者としての存在感は増す一方。しかし「暗黒の20代」というように、これまでの道のりは険しいものでもあった。
大学を卒業する頃には「役者になりたい」という想いがありながらも、「役者として飯を食っていけるわけがない」と感じてリクルートに就職し、「1日で辞めた」という佐藤。「その後には2つの養成所に行って、2つともダメで、また就職をして。でもやっぱり“役者をやりたい”と思い、劇団『ちからわざ』を旗揚げして。いろいろなところに迷惑をかけながら、あっちこっちに行き来して。もう無茶苦茶ですよ!」と声を上げつつ、「でもそうやって遠回りしてきたからこそ、今の自分がいるのかもしれないね」としみじみ。「“これが当たり前だ”という常識のようなものを、気にしないところがあるのかもしれない」と自己分析する。
それは表現者として、胸に刻んでおきたい性質だとも。「僕には“演じる欲求”とは別腹に、“書くという欲求”があるんですが、どちらにしても表現する人間としては、“安住してはいけない”という気がしていて。“常識に風穴を開ける”という言い回しは使い古されたものではありますが、やっぱり表現者としては、そういった心意気を持っていたい」と貪欲でありたいと決意をにじませる。
佐藤二朗
14年ほど前のインタビューでは、役者業について「なくてもいい職業だけれど、だからこそ誰もが届かない“彼岸”にいたいと思う。他のことは何もできない、ただのおっさんでいいけれど、お芝居に関しては特別。“彼岸にいる人”でありたい」と話していた。57歳になった今の佐藤二朗の心境について尋ねてみると、「松尾スズキさんが、“役者は芝居に関しては彼岸にいなければ”と言っていたことにすごく共鳴したんですよね。今も“彼岸にいる人”でありたいと思っていますが、その時とはちょっと違って。常に“僕は彼岸にいることができているだろうか”という不安がある」と回答。「14年前のほうが、自信があったかもしれないですね。でもその不安が、芝居にいい影響をもたらしている気がするんです」と、もがきながら高みを目指し続けていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
『名無し』は、5月22日(金)より全国公開

