『ベネデッタ』ポール・ヴァーホーベンのインタビュー到着 「簡単なことじゃない」脚本交代の裏側も
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鬼才ポール・ヴァーホーベン監督が実在の聖女を挑発的に描く伝記映画『ベネデッタ』より、監督が製作の背景について明かすインタビューが到着。併せて、監督が主人公のベネデッタを演じるヴィルジニー・エフィラに演出中のメイキング写真も公開された。
【写真】鬼才ヴァーホーベンが描く実在の聖女『ベネデッタ』フォトギャラリー
物議を醸したヴァーホーベンの新作は、17世紀に実在した修道女の裁判記録から着想を得たもの。主人公は幼い頃からキリストのビジョンを見続け、聖痕や奇蹟を起こし民衆から崇められた一方、同性愛の罪で裁判にかけられたベネデッタ・カルリーニ。男性が支配する時代に権力を手にした彼女がおこした奇蹟は本物か、はたまた狂言か。彼女に翻弄される人々を描いた奇想天外セクシュアル・サスペンスが完成した。
まず制作の経緯について、ヴァーホーベンは「最初は、50年間共に仕事をしてきたオランダ人脚本家のジェラルド・ソエトマンからジュディス・C・ブラウンの著書『ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア』を渡されたんだよ。私たちはこの本の映画化の作業に取りかかったが、セクシュアリティやエンディングなどについて意見が合わず、妥協点も見つからなかった」と告白。脚本交代を余儀なくされ、「ジェラルドが匙を投げると、私は『エル ELLE』の脚本家デヴィッド・バークに声をかけた。デヴィッドは脚本を執筆し、宗教、セクシュアリティ、教会の政治的駆け引きを見事なバランスで描いた。これは簡単なことじゃないよ」と紆余曲折の背景を明かした。
映画化には3つの決め手があったといい、「第一に、珍しい記録だった。キリスト教の歴史においてレズビアンの裁判があったなどという記録は他にないからね。第二に、裁判の記録や本書のセクシュアリティの描写がとても詳細なこと。そして第三の決め手は、ベネデッタがテアティノ修道院でも、ペシアの町でも本物の権力を手にした17世紀の女性だったという点だ。ベネデッタは聖人としても修道院長としても有名だった。才能、幻視、狂言、嘘、創造性で権力を手にする立場にのしあがった」と説明。そして「手段はどうあれ、完全に男が支配する社会と時代に彼女はそこまで登り詰めたんだよ! 女には何の価値もなく、男に性的喜びを与え、子供を産むだけの存在だった時代にね」と付け加えた。
実在のベネデッタについて、「神秘家と狂言師、どちらも少しずつ併せ持った存在だったんじゃないだろうか」と話すヴァーホーベン。しかし、映画での彼女について、過去作を引き合いに出しながら次のように言及した。「『トータル・リコール』でアーノルド・シュワルツェネッガーが経験する物語は夢か現実か、どちらの解釈も成り立つね。『氷の微笑』で殺人者はシャロン・ストーンだったのか、それとも他の女だったのか? 私たちにはわからない。人生においては、物事には複数の見方があり、人にはみな独自の主観的な真実があると思っている。だから観客がそれぞれ決めればいいんだ」。
数々の異彩なヒロインたちを世に放ってきたヴァーホーベン。新たに加わるベネデッタに注目だ。
映画『ベネデッタ』は、2月17日より全国順次公開。R18+。