山崎貴監督、実写映画化を熱望した『寄生獣』は「僕の中ではわがまま作品」
そんな監督の苦労を全く感じさせないほど、作品の世界観、迫力は壮大だ。そこには総合監督とVFX監督を兼任しているという山崎監督ならではの強みがある。「ジャッジのスピードも早くなるし、自分でも手を動かしながらやれるので、少ない人数で意思疎通もできます。これが僕の売り。映画監督っていっぱいいるから、セールスポイントとしてアピールしていかないとね(笑)」。
もちろん、物語をしっかり描ける監督でなければ二刀流はマイナスになりかねない。そこが両立するから山崎監督は他と一線を画すのだろう。「実際できているかはわかりませんが、僕自身もそうありたいと思っています。VFXって素敵で面白い物語の上でしか輝けないんです。あくまで物語がご主人様でなればならない。僕が技術的なところから来た人間だからこそ、その部分は強く意識しています」。
本作の後編に当たる「完結編」は、そんな山崎監督のしっかりとしたストーリー作りが如実に表れ、原作の持つ「文学性」が色濃く出ている。「VFXだけやりたい映画ってあるじゃないですか。それって見ている側も辛いし、作っている方も切ない。すごい面白い話を見たいし、見せたいですよね」。そうした強い意志が『寄生獣』を“物語で勝負”する映画に仕上げたのだろう。
一方で、VFXディレクターとしての本作の見どころも語ってくれた。「僕は特典映像って大好きで、ブルーレイなんか買うと、そこから見ちゃうぐらいなんですよ」と笑顔で語ると「この作品の特典映像も豪華です。特にラストで新一(染谷将太)と後藤(浅野忠信)が戦うごみ処理所の戦いのシーンとかは『こんな感じで撮っているんだ』って結構驚くと思いますよ」と“映像”としての注目点を挙げてくれた。(取材・文・写真:磯部正和)
『寄生獣 完結編』は2015年12月4 日(金) ブルーレイ&DVD発売。