“出ているドラマにハズレなし”と言われる理由 野呂佳代の強みとは
個人的に、野呂が役者としての頭角を表すきっかけとなったドラマは、2023年放送の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)だと思っている。彼女が演じたのは、主人公の同級生“ごんちゃん”こと丸山美佐。ごんちゃんは、テレビ局でメイク担当の仕事をしているため、華やかな世界にいるけれど、中身はいたって等身大だ。
ランチタイムに愚痴を吐きながらも、仕事中はきちんとプロとして振る舞う。その切り替えが、いかにも社会人らしく、「こういう人、いるよな」と思わせるリアリティがあった。特別なことはしていないはずなのに、彼女がいるだけで作品の雰囲気が一気に“現実”に引き寄せられるのだ。こうした質感は、ほかの役者が「野呂ちゃんみたいに」と言われても再現できるものではない。
野呂佳代
また、野呂の出演作のなかで、とくに印象に残っているのが、2024年放送のドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系/以下『アンメット』)である。このあたりから、コアなドラマファンの間では、「野呂佳代が出るドラマは名作が多い」といった声が、なかば“定説”として語られるようになっていった。野呂の演技が好きで、同作を未視聴の方がいたら、まずは第10話だけでも観てほしい。
『アンメット』第10話では、野呂演じる麻酔科医の成増貴子に、パートナーと死別した過去があることが明らかになった。普段は明るい成増が、「なんかさ、わたしのなかではまだ生きてるっていうか」「とっくにいないのに、ずっと居座ってるんだよね」と同僚に向けてぽつりぽつりと本音をこぼす。このときの、感情を“見せる”のではなく、“にじませる”ような芝居が、喪失の深さをよりリアルなものにしていたのを覚えている。

