“出ているドラマにハズレなし”と言われる理由 野呂佳代の強みとは
野呂佳代
そして、『銀河の一票』だ。同作は、政界を追い出された主人公・星野茉莉(黒木華)が、“選挙参謀”として政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂)をスカウトし、都知事選に挑む…という選挙エンターテインメント。出会ったばかりの人に、自分の人生を託すというのは、正直なところ無理がある設定のようにも思えた。しかし、野呂が演じているからだろうか。「分かる、この人になら託したい、託せると思うよね」と茉莉に共感している自分がいた。
第1話、茉莉の自殺(勘違いだったわけではあるが)を止めようとしたあかりは、「影響ないですよね。わたしが死んでも、あなたの人生に」と突き放すように言う茉莉に、「そんなわけないでしょ。大だよ、影響大! さっき言ってたじゃん。世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ないって。あなただって世界の一部でしょ? わたしが幸せでいるために、あなたにも幸せでいてもらわないと」と返す。本来であれば、どこか“綺麗事”と処理されてもおかしくない台詞だが、そうはならないのは、野呂が持つ包容力ゆえだろう。
太陽のように明るいキャラ…に見えて、実は闇を抱えているというのも、野呂の真骨頂である。第2話では、あかりの命を救ってくれた恩人・鴨井とし子(木野花)が、認知症を患っていることが明かされた。なかでも、とし子が「なくなっちゃうのかね、わたし」と弱音を吐いたとき、「なに言ってんの」と震える声で返すシーンが、印象に残っている。いちばん辛いのはとし子だから、自分は笑顔でいなければならない。だけど、どうしようもなく切ない。そんな心の揺れが、この1シーンに凝縮されていたのだ。
今のところ、あかりが都知事選に出馬する様子はない。もしも、彼女が政界に進出するときが来ても、きっと特別なことはなにも起こらないのだろう。ただ、誰かの言葉を受け止め、自分ができることをしていく。その積み重ねが、結果として人の心を動かしていくのだと思う。そんなふうに、どんな物語のなかでも、“日常”を信じさせてくれるところに、野呂佳代の強さがある。
(文:菜本かな)

