カンヌ映画祭、批評家たちによる星取り発表! 現地での河瀬監督作品の評価は?

開催から9日目を迎え、いよいよ終盤に差し掛かったカンヌ映画祭。最高賞のパルムドールを競うコンペティション部門も、全18本のうち14本の上映が終了した(21日時点)。
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期間中に特別発行される映画業界誌には、星取り表が掲載されている。中でも各国の記者10人が投票している英国の「スクリーン・インターナショナル」と、フランスの映画評論家15人で構成されている「フィルム・フランセ」は注目度も高い。この2誌の評価から振り返ってみたい(作品タイトルの後ろの( )内の点数は、各記者0~4点の投票を平均した数値で、前者がスクリーン、後者がフィルム・フランセ。21日時点で、12本を対象としている)。
2誌がともに高い点数をつけているのが、カンヌ常連監督の2作品。ひとつはベルギーのダルデンヌ兄弟『Two Days, One Night(原題)』(3.0/3.2)で、2誌で1位と3位につけている。マリオン・コティヤールがリストラされそうなヒロインを演じ、彼女の雇用を続ける代わりに自分たちのボーナスを諦めるという投票を得るため、題名の通り2日をかけて10人の同僚のもとを説得して回る物語である。もう1本がトルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン『Winter Sleep(原題)』(3.4/2.79)で、3位と2位の評価だ。世界遺産のカッパドキアを舞台に、雪に閉じ込められた室内で展開される3時間16分に及ぶ長編。老境に達した小説家と若い妻を中心に、溢れるようなセリフの数と映像の美しさで観客を圧倒するが、そこで交わされる話題は極めて普遍的であり、人々の心をつかんでいるのだろう。過去にダルデンヌ兄弟はパルムドールを2回、2席にあたるグランプリと脚本賞を1回受賞し、ジェイランはグランプリ2回、監督賞を1回受賞している。
対照的に2誌の評価がはっきり分かれた作品もある。英国の名匠マイク・リーの『Mr. Turner(原題)』(3.6/1.87)と、モーリタニアのアブデラマン・シサコの『Timbukutu(原題)』(2.6/3.0)だ。両作品とも開幕翌日に上映され高い点数をつけていたが、2誌の評価は全く裏返しとなっている。好みが分かれる内容だったということだろうが、審査員の中に強く推すメンバーがいれば、他を押しのけて受賞する可能性もあり、要注目だ。
河瀬直美監督『2つ目の窓』(2.3/1.77)は、この名だたる面子の中ではやや低い評価にとどまっているが、公式上映でのスタンディングオベーションが証明するように、多くの観客の心はつかんでいる。この他にも星取りに間に合わなかった後半上映の作品に、カンヌの申し子とも言うべきカナダのグザヴィエ・ドランが初めてコンペ入りした『Mommy(原題)』や、パルムを始めカンヌでの受賞実績十分のケン・ローチ『Jimmy’s Hall(原題)』、『アーティスト』で旋風を巻き起こしたミシェル・アザナヴィシウスの『The Search(原題)』、監督は欠席のまま公式上映が行なわれたジャン=リュック・ゴダールの『Goodbye to Language(原題)』など話題作が並んでいる。初日の記者会見で審査委員長のジェーン・カンピオンが「期間中にメディアの情報から審査員は距離を置くことで合意した」というように、批評家と審査員の評価が異なることもあるだろう。
注目の結果は、現地時間で24日(土)夜の授賞式上で発表される。(文:岡崎 匡)